グッバイ・レッド・ブリック・ロード-116-
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しかし辛辣な返答に対し、担任からの反撃は来なかった。
担任の携帯電話がピロピロ鳴ったからである。
学年主任が顔を上げる。
「君の言いたいことは判った。でもそのことと今回の事象とどんな関係が?」
締めくくりに来たか。
「事象……まぁいいですけどね。真由ちゃんは被害を受けたと名指しで言ってるわけです。叩かれた子供の方です」
「でも証拠がない」
「自分の子がそう言ってもそう言い返しますか?自分の子だったらどうしますか?」
「まず……話しを聞くだろうな」
「次のアクションは」
「事実かどうか確認する」
「どうやって?」
「学校……」
学年主任は言いかけて口ごもり、目を見開いた。
自己矛盾に気付いたのである。自分が親なら要求するであろうことを、自分自身は否定しているのだ。
そこで電話をしていた担任の声が張り上がった。
「え?確かにそれは僕の……」
言葉と共に、学年主任と真由の父親に目を走らせる。
真由に関係あるがロクでもないこと。レムリアは直感した。
「……自殺!?」
担任の目が見開かれた。
12
「ええ、今その生徒の自宅に……判りました」
担任は電話を切って説明する。例の4人組の内の一人が、学校の屋上、フェンスの外側に立っているという。
「一体なぜ……」
「グチグチ言ってないで早く戻りなさいよっ!」
レムリアはけしかけた。真由が登校しなかった所為……その疑いが強いが、今それをここで議論している場合ではない。
自分の場合もそうだったが、なんで、教員というのは、当事者に聞かず、憶測と思い込みで勝手に事を進めようとする輩が多いのか。
経験に基づく決めつけか。
政治家じゃあるまいし。
「は、はい!」
教員二人があたふたと細い道を走り去る。その向こうにバイクが止まり、若い男がヘルメットを外し降り立つ。着ているツナギ服には配送サービス業者のロゴと文字。
(つづく)
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