グッバイ・レッド・ブリック・ロード-118-
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「あの二人に任せたら、その子、飛び降りる可能性があります。ちょっと行って来ていいですか?」
「真由は」
「当然一緒に。恐らく……その子は嫌々加わっていたんでしょう。露見し、レッテル貼られると思って将来を悲観し、衝動的にフェンスの外に、そんな感じかと」
バレたらおしまい……その子が叫んでいるというセリフから類推するのは、そんな背景。
父親は頷いた。
「なるほどな。真由がその気はないと言えば解決するわけだ。まぁウチも仕返しが目的じゃないからな」
「ええ、いじめる側にも理由があるんですよ。それ飛び越して頭ごなしに押さえつけるだけじゃ何も解決しない。どこかのバカ国家が謹慎処分とか言い出してるようですが、何か不満のはけ口、優越的な地位に立ちたいというのが原動力ですから、ひっくり返せば押さえつける何かが存在するわけです」
「なるほど」
父親の了解を得て真由を起こしに行く。和室のふすまを開き、敷居の板をノック代わりにコンコン。
「真由ちゃん」
「……レムリア?」
4人組の一人が自殺を図ろうとしている。と、告げると、真由は布団から飛び跳ねるように身を起こした。
寝巻きのまま、枕元の携帯電話だけ持ち、サンダルを突っかけて走り出す。
待ってと声を掛けるヒマさえない。レムリアはウェストポーチを巻き付け、彼女を追う。
「これが金曜日の自分だったら、知るか、って思っただろうね」
追いつき並んだレムリアに、真由はカラコロ走りながら言った。
「でも、死ぬほどのことじゃない。私のために死ぬなんて冗談じゃない。“今後”がないなら、それでいい」
学校に到着する。校門前の坂道に車が一台。
車は門を塞ぐように停車している。その傍らには……教員であろう、男が二人おり、走ってくる彼女らを見るや、押しとどめようと両腕を広げる。
(つづく)
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