グッバイ・レッド・ブリック・ロード-119-
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「(意図したこと形を成さず)」
レムリアは指を向ける。車が坂道を勝手にバックし始め、教員たちが慌てて追いかけ始める。
「使った?」
「使った」
校門をくぐり学校グラウンドに走りこむ。何名かの教員が四角四面のコンクリ校舎上方を見上げており、あちこちの教室の窓に生徒が鈴なり。
彼らの目線のその先を追う。風雨にくすんだ4階建ての校舎屋上。
鉄柵の外に、なるほど女子生徒が一人。わずかな風に揺れる髪とスカート。
そしてその柵の内側、女子生徒から少し離れたところには別の男性教員。しかし何かアクションを起こす気配は感じない。それは状況からして、近づくと飛び降りる、そう言われて制され、釘付け、と見る。
他方、彼女の直下、グラウンドには体育に使う体操マットが何枚か。先の学年主任が電気メガホンを校舎上に向け。
「悪いようにはしない。まず話を聞かせて……」
それはありきたりそのものの言い回しであり、因果関係を踏まえたセリフではない。到底、女子生徒の心に響くとは思わない。
すると。
「私はなんとも思っていない。あなたに何も責任はない!」
メガホンの横から、真由は上を見上げ、叫んだ。
突然の真由に主任と担任が目を剥く。
彼女の白いパジャマ姿は、教員たちの黒地、紺系統の地味な服装の中で、文字通り異彩を放った。
レムリアはそんな彼女に自らのカーディガンを羽織らせる。
「あなたのこれまでにも、今後にも、何も関係ない!」
真由は言った。
そして。
「大丈夫だから」
トーンを下げてひとこと。
「絶対に、大丈夫だから。あなたが思ってるようなことは絶対にないから」
その生徒は、真由の声に耳を傾けている。
同じことを、屋上で釘付けの教員も思ったか、こっそり背後から女子生徒に近づき始めた。
身柄を確保しようというのか。
(つづく)
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