グッバイ・レッド・ブリック・ロード-120-
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バカが……レムリアは歯噛みする。気付かれたらどうするんだ?
ローティーンと言われる年代。お前たちが考えているほど子供でもないし、さりとて大人ほど鈍感でもない。
レムリアは唇に指を持って行った。
「(意図したこと……)」
屋上の少女が柵の内を振り返る。
それは恐らく、女性としての鋭敏さ、或いは、地上の教員が目線をずらしたことに気づき、背後の教員を察知した、と思われる。
少女は衝動的な動きで屋上から蹴りだした。
その身が宙へ。
「(形を成さず)」
レムリアは指先を、身を放った少女へと向けた。
同時に真由が走り出す。いやっ!と叫び、両腕を広げ、校舎の下へ。
絆されたように他の者も走る。その場にいた、レムリア達含め6人が、校舎の下へと走った。
体操マットをみんなで持って、などという時間はなかった。
誰かが音頭を取ったわけではない。しかし暗黙の了解だったように、差し出された手と手が、12本の腕が、クモの巣のように組み合わされる。
シューともサーともつかぬ風切音を立てて人体が落下し、
視界の中で見る間に大きくなり。
どん。その胸にグサッと来るような、籠もった感じの衝撃音は、コンクリートの校舎に反響して尾を引いた。
「うわっ!」
「痛い痛い痛い痛い!」
6人は落下した人体に引きずられ、一斉にマットの上に倒れこんだ。
この時、レムリアは自分の左肩が“ガクン”という感じの違和感を持ったと判ったが、とりあえず無視した。
6人の腕が作った網。その中心には仰向け状態で件の少女。
動かず、目を閉じ、意識はない。頭を打ったか。それともまさか首の骨でも……。
背筋がサッと冷たくなる。レムリアは倒れこんだ一団から抜け出し、少女の状態を見るべくマットに上がって近づく。
(つづく)
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