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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-121-

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 自分の左腕が、自由の利かない状態であることに、この時気付く。見れば右腕に比して長くなっており、脳の指示に対して筋肉が応じるも腕は動かず、ぶらぶら。
 脱臼である。肩が抜けたのだ。
 少女の頸椎に触れたが別段問題はない。ただ、12本の腕で減速されたとは言え、マットがあるとは言え、下はコンクリートだ。したたか頭を打ったのは確かで、念のため更に確認。
 まず大声で大丈夫?と声を掛ける。無反応。
 そこで。
「真由ちゃんちょっとごめん!」
 真由にウェストポーチを開いてもらい、ペンライトを取り出す。少女の瞼を指で開け、そこを照らしてもらい、まずは光に対して瞳孔が開閉するか確認。
 次いで、誰かが持っていたシャープペンシルで腕をつつき、痛みに対する反応をチェック。
 いずれも正常。ただ、脳へのダメージがないと言い切れないので、揺すったり頬を叩いたりはやめておく。
「救急車は呼んだ?」
 振り返って担任に訊く。その向こうから“門番”の教員が走ってくる姿が見える。
「いえまだ……あの、と、とりあえず保健室に」
「あんたは本物のバカか!?4階から落ちたのが保健室で足りる話か!その持ってる電話は飾り物か!?」
 思わず本気で怒鳴り飛ばす。
「レムリア、あたしがかけてるから」
 真由が落ち着いた声で言い、携帯電話を操作する。担任は真由に向かって中途半端に腕を伸ばす。
 電話がつながったと知り、困ったように真由を見る。“ちょっとやめてくれ”……その意図はあからさまと言うべきであろう。サイレン鳴らして救急車……では騒ぎが近隣に知れる、それは困る。というわけだ。
 今、一番大事なことは何だアンタ!
「他にここが痛い、どこかおかしいという方は?」
 レムリアはぶらぶら左肩を右手で押さえながら、救助に参加した一団に問うた。
 
(つづく)

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