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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-94-

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 気が付いた方おられると思われる。いじめられるという体験は、繰り返されることにより、このように暗示を経て固定観念になってしまうのだ。その果てが自己評価の消滅、自分という存在そのものの否定、そして自分の消去……すなわち自殺である。
 いじめられるという体験、いじめるという行為の底知れぬ恐ろしさがここにある。傍目にはからかって遊んでいるだけ。
 
 しかし内実は、拷問で暗示に掛けて殺すのと同一。
 
“ちょっと悪口言われたくらいで何で死ぬかね”
“自殺するほどのことか”
“逃げるにしてもあの世に逃げることはないだろう”
 ……部外者が勝手に決めつけたこの手の言は多く聞くが、これらは、暗示が現在進行中の心に対し、“加速”の方向へ作用することは言うまでもないだろう。絶望に近い状態の心が“死ぬほどじゃないだろう”とヘラヘラした口調の街頭インタビューを見る。
 話に戻る。
「手品?そうかな?」
 レムリアは唇の端でフフンと“姫様笑い”を浮かべた。
「私はそうとは思わないよ。あの子はあなたを信用した。あなた……あの子笑わせようとしたでしょ?私はそれに手を貸しただけ。大道芸見に行ったならさておき、道すがらいきなり手品見せられたら“なんだこいつ”って思わない?不安から楽しいへ変わる途中には、安心という状態が必要。安心はどこから来たのかな?」
 真由は目を伏せて黙り込んだ。
 その目に浮かぶ煌めき。
「真由さん」
 セレネが呼んだ。
「貴女なら、この船で私たちと共に活動できます」
 その言葉に真由がゆっくりと顔を上げる。その目から、現在の星空のように、あまた流れ出す銀色の滴。
「貴女には勇気があり優しさがある。それは何にもまして、この船に乗り組む者に求められる条件です」
 
(つづく)

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