グッバイ・レッド・ブリック・ロード-96-
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「そんなこと……」
「言われたこともないし、実感もないかも知れません。でも、貴女は、“自分のせいで誰かに迷惑を掛けたくない”、という強い想いが常にあります。違いますか?」
真由は一旦涙をぬぐい、セレネを見た。
「はい」
「だから、貴女と接した人は、貴女に対して安心感を抱くんです」
「でも……」
「学校では拒絶されてしまった」
「……はい」
「だから違うのでは。そうおっしゃりたいのですね。その理由は恐らく、貴女が安心を勝ち得るからです」
「えっ?」
どういう意味だろうとレムリアも思った。言葉尻だけ捕まえれば、受け入れられるのも、否定されるのも、どっちも同じ理由ということになる。
が、口を挟むのはセレネに制されたこともあり控えた。しかも本当なら、もっと彼女に関しては本人に認めて欲しいダイヤモンドが山ほどある。自分で見えないと思っているダイヤモンドが山をなして輝いている。
だがセレネに任せた。というのも、ここでセレネが自分を制したのは、恐らくは。
“大人”の出番なのだ、と思うからだ。
ああ、と合点行くものがある。自分が彼女をこの船に乗せようと思った理由……夜っぴて流れ星はもちろんだが、無意識裡にはこの、それこそ自分自身を受け入れてくれた大人達、子どもを“子ども”としてだけではなく、ちゃんと“人間”として捉えてくれる、認めてくれる大人の存在があったのだ。この船の連中なら、彼女を正確に受け止め、受け入れ、そして彼女自身気付かないダイヤモンドを発見し、認識させてくれる。
最も、そもそも論として、自分がジタバタ走り回って、“彼女を見て”と大人に働きかけている方がおかしいのであるが。
セレネは微笑んで。
「貴女を知った人が貴女に安心する。それは、そうではない人たち、常に敵意を向けられている人たちには、気にくわないのです。後から入って来たくせにいい子に見られようと思って、ぬけがけされた、と感じるのです。あなたが人より優れているように見える……これは多分、レムリアも言ったと思いますが」
(つづく)
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