総武快速passing love ~新小岩~
~新小岩~
待ち合わせ場所を尋ねたら、返信メールには3文字。
新小岩。
僕は慌てて電車を降りる。何故なら今まさに新小岩の駅を出ようとしていたから。
イブの夕刻、東京行きの総武快速はガラガラ状態。15輛もつなげてまばらだが、多分日本橋から横須賀線に向かうにつれ立錐の余地すら無くす。
電車を見送り、足音がして、ふわりと広がる知った香り。
そこに、白いマフラーを巻いた君は、イタズラした少女の顔で立っていた。
いつもの電車が新小岩に到着するタイミングを見計らい、メールをしたとか。
タイミングバッチリと自信満々。でもね。
ずれたらどうするつもりだったんだい?
電車が違っていたらどうするつもりだったんだい?
それに、大体。
降車客も一通り階段を下りて、ガランとなった高架ホームに君と僕だけ。
東京の方には地上デジタルの電波塔。
そこでもなく、その向こうのイルミネーション溢れる東京でもなく、
湾岸沿いの遊園地でもなく。
手招きし、逃げるように先を行く君。
君を追って、駅を降りて、改札を抜けて、街を抜ける。
どこに行くのと尋ねても、君はいたずら少女の笑みを返すだけ。
連れて行かれたのは川の堤防。荒川の川っぷち。
川面に映る街灯りのさんざめきと、月明かりと、冬の星空。
君は立ち止まり、僕の腕に腕を絡める。
ここが目的地なの?食事したりとか、いいの?
「あなたを私が独り占め。川の明かりを二人占め……だってイブだから」
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