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桜井優子失踪事件【78・終】

【終5】
 
〈色々見えるからね。いいことなのか悪いことなのか判らないけどね。本来は死に対する本能的な恐怖のはずなのに。生命の本質に反してるのかもね〉
 よぎったのは、踏切の脇に立って自分を見ている、他人には見えない人。
 或いは海岸洞窟で何年も彷徨っていた虐げられた姉弟。理絵子がいわゆる〝気持ち悪い生き物たち〟の〝職務〟を知ったのはこの時である。彼らは、死者にむち打つ存在から姉弟を守っていた。
 そして、毎夜枕元に訪れる、迷える思い達。すなわち放たれた気持ちの断片。
〈魔物は?〉
 高千穂登与が寄越した概念……
 〝現時点では理絵子が節足動物に対して冷静なのと同様とのみ書いておく。〟
〈持ってくるんだ、儀式に使えって〉
 特異な能力の故に疎外された高千穂登与。
 その孤独と、抱いた怨嗟につけ込むように、彼らは誘いに来たという。俺達と共に、と。
 起きて本物の髑髏が枕元に置いてあったことも。
 幾つかの、彼女の思いが、同時に理絵子に訪れる。
 孤独になることはなかったの。
 魔と対峙する恐怖はどうやって克服したの。
 生い立ちの故に疎外された桜井優子。
 その孤独につけ込むように誘いに来た彼ら。
 そして、Kらは復讐に来た。
 自分にも、魔が復讐しに来るのではないかといつも怖い。
「友達じゃん」
 理絵子は明快にひとこと言った。
 それが今、必要十分条件。
 何も言わなくていい。何も怖がらなくていい。
 私は、あなたと共にいるから。
「強い……」
 自動的、反射的と感じる発音で登与が一言。
「ないない。本当に強かったら連中は寄りついてすら来ないでしょう。……このコロの意志が判る?オレが守っちゃる。弱々しく見えるんでしょ」
 理絵子が撫でると、彼は一吠えして尻尾を振った。
 
 当該天然ガスの爆発より数日後、陥没で生じた池の底から大量の古代人骨が見つかった。但し、バイク残骸や現代人、及び巨躯に相当する骨が見つかったとは報道されていない。
 ただ、六地蔵の脇に持ち主不明の自転車があったという。
 
桜井優子失踪事件/終
 
あとがきっぽいもの

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