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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-127-

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「ええ、じゃぁ」
 3人で病室へ向かう。エレベータで上がり、開け放しの6人部屋に入ると、当人はすでに覚醒し、うつろな表情でベッドの上に座し、外を見ていた。
 その開放されたドアパネルをコンコン叩く。
「大丈夫?」
 レムリアの声に、機械仕掛けの自動的、といった感じの、ゆっくりした動きで、少女は振り向いた。
 坂本教諭によれば名は由香(ゆか)という。肩よりやや先まで髪を伸ばした細身の娘だ。その髪は飛び降りた際の風圧で乱れたのであろうが、直すでなく、そのまま。
 何が己が身に生じたか判っていない、そんな風情。そして、その表情からは、いじめに加担するような刺々しさは感じない。
「あっ……」
 由香はレムリアの背後に真由の姿を認めるなり、ハッと目を円くし、見て判るくらいに身体を震わせた。
 その反応は、攻撃と言うよりは“避ける”印象が強い。すなわち、事態に対する由香の加担が積極的では無かったことを物語った。
 真由がレムリアの背後から飛び出す。ベッドに飛び乗り、手を伸ばし、乱れ髪の少女を抱きしめる。
「いい。何も言わなくていい。判ってる。全部判ってるから……」
 見る間に由香の目が赤くなり、波沸くように輝きが浮かび、そしてボロボロ流れ出す。
「真由ちゃ……」
「いいよ。何も言わなくていいよ」
「でも……」
 そのまま、言葉にならない。
 涙の時間。
 その間、坂本教諭は、ベッドを囲うカーテンの影、ベッドの二人から見えるか見えないか微妙な位置。すなわち、存在は意識させるが出しゃばりはしない。
 その位置取りに、レムリアは担任らとの相違を見い出した。
 由香が落ち着いてくる。真由がそっと身を離す。
 この間、坂本教諭は、その位置から動かず、一言も発しなかった。
 
(つづく)

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