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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-137-

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 ちなみに、……再度書くが、今レムリアが理解し、リペアしようとしているのは、由香が何故“いじめる子”になってしまったかの要因。彼女自身は二度と真由に手を出したりはしないだろうが、そこまできちんと追い込み、解決しておかないと、由香が報われない。“傷つける”行為の多くは、傷つけられた心が、同じことを他に行うことでバランスを取ろうとする働きによるからだ。
「わたし……」
 由香が呟くように口にした。
「ひどいこと、言ったよね。ばあちゃんに」
「え?……」
 急に話題を変えた所為もあろうか、祖母は首を傾げた。
「みんな若くて綺麗なお母さんがいるのに、自分はばあちゃん。そんなとこ友達呼べるか……って。だから、私は友達なんか作らないって」
「そのことかい……」
 今更……そんな感じの、諦念さえ感じさせる笑みを、祖母は浮かべた。
「……ごめんなさい」
 その祖母に、由香は頭を下げた。
「ひどいこと言ってごめんなさい」
「いいよいいよ、由香の気持ちも尤もだもの」
 涙を浮かべる由香の肩を祖母が抱く。
 確かに、ひどい言葉ではあろう。それを聞かされた祖母の衝撃は深甚にして耐え難い物であったに違いない。
 しかしそれは同時に、何か……の事情で由香の保護者が母から祖母へ移った過去を示唆する。“普通の”家庭とは環境を異にする状態であり、由香自身にとっても、深い深い負い目であったこともまた確かであろう。
 何のことはない、真由の家庭と相似なのである。大人の勝手が子どもを揺さぶり、傷つけた。
 その代償を他人を傷つけることに求めるか、親の事情を斟酌して子ども自身が飲み込んで耐えるか。
 そんな二人が、不幸な邂逅を遂げたのだ。
 由香はひとしきり涙を流すと、真由に向き直った。
 
(つづく)

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