グッバイ・レッド・ブリック・ロード-140-
←前へ・次へ→
できちゃった結婚、成り行き故の性格不適合、夫婦生活の破綻、そして双方それぞれの愛人。
“邪魔な子”
レムリアは真由と共にベッドに上がり、由香を抱きしめずにはいられなかった。真由と二人で由香が痛がるくらいにその身を挟んだ。
涙が勝手に出てきて止まらない。子どもが親に言われる言葉として、これほど、これほど酷い言葉が他にあるか。
そして、この告白は、百戦錬磨の気配を感じる坂本教諭にも、涙をもたらした。
「この事実を担任は……家庭訪問の際とか……」
坂本教諭は目元をハンカチで拭って訊いた。
「いえ、問われなければ言わないこと、としておりましたので。ただ、あなた様方は別です。由香がそのような不祥を働きましたのにお許し下さる。どころか、癒そうとさえしてくださる。そのようなお心をお持ちの方々に隠し事など毛頭……」
祖母が涙を拭う。
その言葉にレムリアはちくりと心が痛かった。なぜならそこまで秘密を明かしてくれた相手に、正体を隠している自分がいるからだ。思わず、その“隠し”に感づいている坂本教諭をちらっと見てしまう。
ただ、こればかりは容易に口に出来ない。真由に対しては“自然な形で”バレたし、結果むしろ“ヒミツの共有”という観点で友情の醸成に働いた。しかし、ここでそれを言うのは無関係だし、どころか逆効果だと思われる。過去振り返ると、自分がそれと知った瞬間、“普通”に扱ってくれなくなる、“一歩引いて”しまう場合が多いからだ。この、真由ちゃん由香ちゃん救出作戦にそんな身分肩書きは無関係だし、それで周囲の反応が変わるのはむしろ困るし邪魔だ。
もし、仮に、その肩書きが必要となるならば、その時が来れば自ずから明らかになるだろう。そんな気がする。
(つづく)
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【理絵子の夜話】城下 -09-(2023.11.25)
- 【理絵子の夜話】城下 -08-(2023.11.11)
- 【理絵子の夜話】城下 -07-(2023.10.28)
- 【理絵子の夜話】城下 -06-(2023.10.14)
- 【理絵子の夜話】城下 -05-(2023.09.30)
「小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -24・終-(2023.07.26)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -23-(2023.07.12)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -22-(2023.06.28)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -21-(2023.06.14)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -20-(2023.05.31)
コメント