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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-145-

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「……でも要するに私のせい、なんだよね」
 沈黙を嫌ったか、由香が口にした。
「それは言いっこなし」
 すぐ真由が否定する。
「全ては傷ついた心がバランスを取ろうとしたこと……追いつめられた人は、追いつめられた人っていうのは、何がどうあろうと自分を守ろうとするんだ。端から見ればそれは許し難いことかも知れない。でも本人は必死なだけ。ただそれだけ」
 真由のこの発言は、その場の各人誰をも驚かせた。中でも最も驚いたのは実はレムリアであったかも知れぬ。
 この、傷つけられた娘は、自分が1年半掛かって未だに“怒り”を感じる事象に対し、星降る一夜で“赦し”を与えられるまでに成長したのだ。
「凄い言葉を先生は聞いたよ」
 坂本教諭が呟くように言った。
 すると。
「ジャン・バルジャンですね、先生」
 由香の祖母は言い、
「由香」
 と、孫娘を呼んだ。
「え?」
「お前に、この話を寝しなに読み聞かせた時、なんで司教は許したの?としきりに訊いたね。憶えてるかい?」
 その問いに、由香は驚愕の沈黙と、瞠目とで応じた。
「そんな大げさですよ。先生、おばあさま」
 真由ははにかんだ。
「彼女の受け売りだし」
 真由は前席に手を伸ばしてレムリアを指差すと、種明かし、とばかり、おどけたように言った。
「えっ?え?」
 突然の注目にレムリアは何であたし?と自分を指差し、後席に向けて半身をひねり、おどけて応じた。
 このやりとりに、坂本教諭はフッと笑って目線を外したが、レムリアの隣席、由香の祖母は、レムリアから目を離さない。
 真っ直ぐな目にちょっとドキッとする。隠し事をしているというのは実に精神衛生上良くないとしみじみ感じる。それこそジャン・バルジャンの銀貨ドロボーだ。
 そんなレムリアのドキッ、に、由香の祖母は気付いたのか。
 
(つづく)

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