グッバイ・レッド・ブリック・ロード-146-
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「……ああごめんなさい。歳かしらねぇ。あなたをどこかで見たような気がして。万博……」
超・ドキッ。
「が、この地であったのよ。それでね……」
「ばあちゃんまた万博ぅ?ごめんね。ばあちゃんシーズンパスで100回くらい会場行ってるからさ。どこかの国のコンパニオンとゴッチャになってんだよきっと」
軽く笑う由香に、レムリアは思わずごまかしの微笑み返し。気のせいです。ええ気のせい。
タクシーが止まった。
「あのーこの先はちょっと」
運転手が言った。路地の分かれ目。そこより先へクルマは困難。といっても、真由の工房まで徒歩で数分。
下車する。由香の祖母は足の調子が今一つ、とのことで、真由と由香とが手を取り、先んじて坂道を上がる。
坂本教諭は自分も行こうか?と言ったが、レムリアは断った。
「むしろ、先生は何も知らない振りでこのまま学校へ向かわれた方が良いと思います。学校は明らかに真由ちゃん宅と由香ちゃん宅に二枚舌を使っている。だったら私たちは私たちで、そっち向きの顔と、こっち向きの顔を用意しておいた方がいい。これから真由ちゃん家(ち)に行けば、実は両家が行動を共にしていると、否が応でも教頭には判明するわけです。学校は当然作戦を変えてくる。坂本先生を巻き込もうとしないわけがない。だとすれば……」
「私は“何も知らない”でいた方が、真意馬脚を現す可能性は高い、と。……フフ、私はスパイってわけか」
「秘密兵器は用意できませんけどね」
「じゃぁ可愛らしい“M”さんの電話番号を伺っておこうかしら。携帯お持ち?」
ここで、レムリアがウェストポーチから件のいかめしい面構えの衛星携帯電話を取り出すと、坂本教諭はわぁ、と小さく声を出し、目を剥いた。
(つづく)
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