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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-159-

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 しかし21世紀初頭現在、現実にはその程度なら“まだマシ”の部類である。自分の所業で誰かが死んでも、それが重大である、ことすら気付かない者さえある。
 教室で殺人。……そうした事件、そうしたタイプの子供の存在が、社会に衝撃に与えたことは、転換点の象徴として追って歴史に記されるであろう。
 そんな子ども達を生み出した原因としては、いろんな人がいろんな指摘をしている。結論は歴史が与えよう。しかし各論共通していることは、まず傷ついたことがない。すなわち、甘やかされたか、他の子との接点がなかった故の、“傷つく”痛みの認識不足。及びそれがもたらす“他を傷つける”事への自制心のなさ、心の痛みに対する想像力の欠如。
 そして、核家族化、及びペット禁止住宅など、生き物との触れ合いが減ったことによる“死”という観念への理解の希薄さ。
 その相乗効果。
 坂本教諭は湯飲みの茶を一口。
「幼い子が虫の脚や翅をちぎって遊んだりしますでしょ。同じ感覚で人を傷つけてる感じなんです。男の子が小さな女の子を叩いて泣かせて征服欲を満たす。あれと同じです。でもそれと違うのは、怒られるかも知れない、という自覚、“後ろめたさ”が全くない」
「となると、すぐに理解させる、というのは難しいですね」
 レムリアは言った。そこまでイッてしまうと、恐らくは、自分が死ぬ目に遭う位しないと、被害者側の心理は理解出来まい。
 無論、無理矢理そうした形で理解させる手段を持ち合わせてはいる。それこそ船で連れ出して戦場にでも放り込んでやれば良い。でも、一般的な回答にならない。
「みじめな気持ち、てのは体験しないと判らないからなぁ」
 父親は言いながら、レムリアにコテンパンにけなされた湯飲み茶碗を手にし、苦笑した。
 
(つづく)

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