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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-172-

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「し、失礼な!娘を疑えと!?」
 曲解であった。明らかに坂本の意図を理解していなかった。坂本の言葉をとりあえず攻撃の一種と捉えたことを意味した。
 “自己正当”の塊で出来ている人間は、自分にとって不都合、或いは想定外の事象をとりあえず攻撃と捉えて排除する傾向がある。それが“正当”を保持するには確率的に最も確実だからだ。
 そして得てして、自らの誤解をも相手の誤謬であると糾弾に出る。
「そうではありません」
 坂本は母親、をいなすように一呼吸置いた。
「警察の捜査ならいざ知らず、学校内の出来事です。その場合、持ち寄った情報の辻褄が合うか?という観点から総合的に判断しなくてはならないと思うのです。そうした観点から、お母様からの情報として、娘さんが把握されている状況や心情をお聞かせ願いたかったのです。現状では冒頭申しました通り娘さんは推定有罪です」
「ますます失礼な!ウチの娘がそんなことするわけない!なのに娘に犯人なのか訊けとあなたはおっしゃるの?あなたは人の娘を傷つけろと?」
 母親、は身を乗り出して食ってかかった。この者の人間性や基本特質に対し、そろそろ断を下して良いであろう。
 坂本は静かに机上で両の手を組み合わせた。
「尋ねる方法は“犯人か?”だけでしょうか。自分の子どもが傷つかない質問法くらい、普通の親御さんならご存じと思いますが如何でしょうか」
 この言葉に母親、は動作で応じた。
 バネが弾けるように立ち上がり、応接セットの机をバン!と両手で叩く。
 衝撃で湯飲み茶碗が飛び上がり、机上に落ち、倒れ、転がり、止まる。
「失敬なっ!」
 母親、は糾弾の指を坂本に突きつけた。
 指先が力みによってブルブル震える。爪にはマニキュアが施され、手首では多数のアクセサリーが震えによってじゃらじゃら音を出す。
 
(つづく)

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