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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-175-

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 母親、が口をあんぐり開く。
「あんたは……先生の分際でクラスに言いふらした……」
「違います。私が調査した結論は現状それです、というだけの話です。生徒達は生徒達で何か思うところがあって、お嬢様への攻撃的言動、メールにつながったのでしょう。だったら尚のこと、何故、の解明にお嬢様自身のお言葉とご心情を頂戴したいのです」
 坂本の言葉が終わらぬうち、母親、の手が拳を作って、またぞろブルブル震え出す。無論、“学校は娘を犯人扱い”と受け取って怒っているのである。
 最早、この母親、には自分に投げかけられる言葉全てが“攻撃”に聞こえるのだろう。自分の意志……坂本を本件から解任し、娘に対する疑念について校長が謝罪し、“いじめっ子扱い”の犯人を捜し出せ……と異なることは、全て攻撃なのだ。その曲解に満ちた心理構造は、裏返せば自分に対する否定、それ以前に瑕疵誤謬の指摘そのものすら認めないことを意味する。それは或いは“自分が間違っていることへの恐怖”と書いた方が的確かも知れぬ。己れの行動・言動に対する自信、その裏打ちが伴っていないので、暴言と押しつけで他に“認めさせ”そこに己れのレゾンデートルを得るのだ。“そんなことをするわけない”の一本調子は、追いつめられるとそれしか出てこない、の顕れである。しかし坂本は“いきなりのカウンター”で、母親、の一本調子がそもそも根無し草であることを最初に露呈させてしまった。
 その結論、伴いもたらされた洞察の感覚は、天啓に近い物があったと坂本はレムリアに言った。
「私も母親の端くれですが」
「は?」
 突然の話題転換は少なくとも母親、の激怒ポテンシャルを幾分か奪った。
 そこで2時限目終了のチャイムが鳴る。その音量ゆえに会話不能なチャイムの時間26秒が、更に幾分かポテンシャルを奪う。
 
(つづく)

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