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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-177-

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「卑怯よ!断りもなく録音なんて!」
「あら、開口一番証拠はあるのかと仰ったのはお母様でいらっしゃると認識してますが?」
 坂本はMDレコーダを指差して言い、元通りスーツに収めた。
 母親の指先がぴくりと動き、しかしそれだけ。
 ちなみに、情報収集と操作、証拠(言質)の確保に関し、坂本が“政治家の動き方”と全く逆を行い、要求したことは説明するまでもあるまい。
「この……」
 母親、は食いしばった歯をギリギリ噛み鳴らしながら、坂本を睥睨するだけ。何か言えば言うだけ“証拠”が増える以上、何も言わない方がマシ、との考えに至ったのだろう。頭がおかしいだの盗っ人猛々しいだの、名誉を毀損したのは実は自分の方だ、という認識に至ったためかどうかは判らぬ。
 校長が口を開く。
「“ウチの子が云々をするわけない”……それは逆に、お子様の意志や尊厳を傷つける言葉に他ならないのです。お母様」
 穏やかな全否定。しかしそれは母親、から怒りの力みを取り、ハッ、としたような目を校長に向けさせた。
「子どもから大人になる時期です。自分はこうしたいんだ、という方向性がハッキリしてくる。自分が一人の人間として独立した存在であり、それを周囲に認めさせたい、と思う時期なのです。我々はその時期の存在を認め、尊重し、言葉と気持ちに耳を傾ける義務があるのです。しかし失礼ながらお母様、お母様のお言葉からはその義務を果たされているようには感じられない。二言目には“そんなことをするわけない、娘は私を信じている”……それはそんな年頃の娘さんにとって、“黙れ”と言われているに等しいと感じますが如何でしょうか」
 この言に。
 母親は唇を震えわななかせ。
 瞳に揺らぎを浮かべ。
 眉をへの字に曲げ。
 
(つづく)

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