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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-178-

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 応接室ドアにもたれかかりながら、やはりマンガ的なまでに泣き崩れた。
「ひどいわ~。学校の先生が二人がかりで一人の親を……ひどいわ~……」
 思わず、であろう。互いの顔を見合わせる、校長と坂本。
 と、廊下をジタバタと走ってくるサンダルの音が聞こえ、母親、のもたれているドアが力任せに引き開けられ、母親、が引きずられてひっくり返り、ジャージ姿の真由の担任が顔を出した。
「あっ……」
 担任が見たのは、天へ向かい立つ伝線したストッキングと、あらわな下着。
 世の中、何をしても間の悪い人間というのはいるものだ。
「何か?」
 坂本の問いに担任は躊躇しながら。
「その……こちらの……」
 次いで発した言葉に、母親、が半狂乱といった案配の反応を見せた。
 

17

 
 半狂乱の理由……娘が家から姿を消した。
 しかも危急の対応を要求する。経緯は以下の通り。クラスの男子の一人が、聞こえ来る母親の声に対し、その女性徒の家にイタズラ電話をしたというのだ。
 応対に出た娘に、鼻をつまみ、声色を変えて、「警察だが今から行く」とか言ったようである。
 斯くして坊主頭にニキビの少年は、半べそで坂本教諭に訴えた。
「イヤーって悲鳴が聞こえて。電話放り出してバタバタって走って行く音がして、ドアがバタンと閉まる音がして。先生オレ……」
「大丈夫。君を犯人にはしないよ」
 坂本教諭はそう言い、青い顔した少年の両肩を掴み、保健室のベッドに座らせた。
 聞けば彼は真由に好意を持っており、ゆえに今回の“主犯”がこの娘と知るや、そもそもクラスで評判が悪いことにつけ込み、とっちめてやろうと思ったとか。
「彼女には何も言うんじゃないよ。言えば決定的に嫌われるからね。何故だか判るかい?」
 少年は無言で坂本教諭を見返す。その目には“?”と書いてある。
 
(つづく)

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