【妖精エウリーの小さなお話】花泥棒-2-
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女の子に話を聞こうか、思ったところで女の子はその場から立ち上がり、カサを手にしました。
「ちょっと、見てみる」
〈風邪引かないように〉
「ありがとう」
歩き出した女の子の後ろからついて行きます。手のひらサイズの白装束が飛んでいるわけですが、出歩く人も無し、位置も高いので、見られる心配はないでしょう。
女の子は高層住宅群の駐車場の間を歩き、一軒家が建ち並ぶ街区へ。
道沿いの柵に、敷地の中から道路側へ金具を下げ、中にプランターを並べているお宅有り。
強い敵意。
「あっち行け!全くどこの子だい!」
高齢の女性の怒鳴り声がして、女の子は走り出しました。つまり、逃げ出した。
女性は、女の子が花を持って行くので見張っていたということでしょう。
杖を手に門扉を開いて道路へ。対し女の子は、振り返り振り返りしながら、速度を落とさず。
走り続け、角を一つ折れ二つ折れして。
川の堤防の下にあるトタン屋根に窓が一つの建物へ。
近くには古タイヤが山と積まれています。
女の子はその窓の前へ行くと、立ち止まりました。
窓の下には土が盛り上がっており、割り箸が刺してあります。
良く見ると周辺にしおれた、或いはまだ元気な花々が散らばっています。
「まだなの?」
女の子は呟いて、無造作にシロツメクサを投げ出しました。
そうやって、散らばって、しおれて、積み上がった花たち。
女の子は建物の側面に回り、首から下げていたカギを取り出してドアを開けます。
この建物が家であるようです。
私は女の子が花を放ったその辺りに降り立ちました。
死臭。
良く見ると割り箸には〝ジョン〟と書いてあります。
そして、その辺りを足繁く動いている虫たち。
〈ああ、妖精さんだ〉
一匹が私に気付いて言い、一帯の面々が集まってきました。
動物の死肉をエサとする仲間達です。人間さんのイメージもあって酷い言葉で呼ばれいますが、ここではスカベンジャーと表記します。
(つづく)
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