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【妖精エウリーの小さなお話】花泥棒-3-

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「つまりお墓、なのね」
〈ええ。犬です〉
 ペットに花を手向ける。不自然ではありません。ありませんが。
 花を盗んで、投げつける。
 それは不自然、というか死んだ犬が浮かばれない。
 天国へ旅立って2週間以上になるようです。呼んでみましたが反応無し。
 言わずもがな不穏、不気味な気配が濃厚。
 でも、私のテレパシー能力は何ら異常の兆候を拾いません。つまり、女の子にとっては常識・日常・当然の範疇。
 自転車が近づいてきたので〝お墓〟の影へ。
 いわゆる〝中高年〟と呼ばれる世代の女性が玄関先に自転車を止めました。割烹着に三角巾という姿で、食用油の匂い。スーパーマーケットのネームプレートを付けています。お総菜関係のお仕事なのでしょう。
 手には買い物ビニール。
「おかあさん!」
 声がして家の中を走る足音。
「お帰り!」
「ただいま……今日は卯の花だよ」
「え~?かおるお肉が良かったのに」
「ごめんね……」
 声にならない声が聞こえます。……生活が苦しい。食材は主として期限切れ。
 そして。
「ジョン、今日も寝たままだった」
「そう」
 寝ている。この認識はどういうことでしょう。お母さんの声にならぬ声によれば、お母さん自身はジョンを見舞ったのが死であることを知っている。でもそれを話すことは出来ない。
 この女の子〝かおる〟ちゃんの唯一の友達だから。
 それを失ったと娘が知ったら。
 明かりが点りました。
 電灯ではありません。ろうそく。
 気が付くとこの家には電灯線が引き込まれていません。
 21世紀の日本なのでしょうか。貧困の故に飼い主が手放したペットたちと話をしたことがありますが、彼らに寄れば〝生活保護〟という救済システムが存在するはず。
「今日の宿題は朗読なんだ」
 
(つづく)

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