グッバイ・レッド・ブリック・ロード-181-
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止まった列車から車掌が線路に降り立ち、後方に当たる駅方面に目をこらす。カーディガンの腕がその手を高く持ち上げて応じる。
車掌は状況を把握したらしく、白手袋の手を上げた。了解、の意であろう。
次いで、ぎこちなくマイクを操る音が、ホーム上のスピーカからガサゴソ聞こえた。
『お客さん、大丈夫ですか?』
無人駅管理システム……その幹事駅である常滑からの問いかけ。問題の対処にインターホンで会話できるようになっている。
「ええ、お騒がせして申し訳ありません。事態は食い止めました。ケガなどありません」
カーディガンの主……レムリアはジャージの少女から目を離さず、腕も離さず、言った。
『了解しました。確認終了5271E抑止解……』
業務連絡っぽい内容の途中で、マイクの声は途切れる。程なく、止まった電車から電子警笛を短く鳴らす音が聞こえ、電車が起動。
線路に響く転動音が遠ざかる。
「『やめてやる。お前がここで自殺すればな』そう言ったそうだね」
レムリアは腕を掴んだまま言った。
「ここが自殺向きだって認識があったからだろ?カーブの向こうから高速で走ってくる。下り坂を下りてすぐだ。なるほど運転士が発見した時は手遅れだね。
だから来てみた。案の定とはね。しかしいい気なもんだね。あんたにどれだけの人が振り回されたか。ひどい目にあったか。まぁ、自分のやることに責任持て、って教えられてないから、そういうこと出来るんだろうけどね。
そんなのに簡単に死なれてたまるかよ」
レムリアはそこまで一気に喋り、どうしてやろうかと一瞬考えた。言いたいことは山ほどある。認識させたいこと、身に染みて覚えさせたいこと……。
ただ、この沸き上がって来る怒りのままに言葉を出すのは、恐らく解決へ遠回りとなるだろう。
(つづく)
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