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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-185-

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 奔放に膨張しようとする自我(エゴ)に禁忌や抑制が及ぶからこそ、そこを打破しようという思慮工夫につながり、人格的な成長を促すのだし、膨張する人格間に摩擦が生じるからこそ、傷や限界や、共存するための優しさを知り、愛という感情の理解の礎になるのである。
 この少女は“死”を理解するとか、真由ちゃんに働いた狼藉がどれだけ酷いことであるか、理解させるための土壌がそもそも出来ていない。展開して、いじめる子を頭ごなし機械的に罰するのは無意味。その心を紐解かないと、“否定された”という不満の塊になるだけ。
 じゃぁ紐解くには何が必要なのか。考えてる間に、少女はペットボトルの水を、ゴクゴク音を立てて全部飲んだ。飲んで、“どうすればいい?”といった表情をレムリアに向ける。全部飲めと言った覚えはない。加減という語を恐らく知らない。それにホラ、飲んだら捨てに行けってばよ。
 少女はアクションを起こさず……起こせず、レムリアに目で尋ねる。その目は、尋ねる瞳は、水晶のように無垢で純粋。
 対向、赤い車体の空港行き急行が通過して行く。
 舞う風に二人の髪の毛が舞う。短いレムリアのはすぐに落ち着き、肩までの少女の髪は乱れた状態で止まり、しかしそのまま。
「お前、父親や母親に叱られたこと、あるか?」
 電車が去って後、レムリアは少女の手から空のペットボトルを奪うように取り、思わず訊いた。
「だめだよ、とか、どうしてそんなことするの!とか、言われたこと、あるか?ひっぱたかれたか?」
 まさかと思うが念のため、“叱られる”具体的状態を言葉にしてみる。
 即答がない。そして気付く。たった今のこの少女の状態は、“何かしてくれるのを待っている”幼女そのもの。
 
(つづく)

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