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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-187-

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 レムリアは自らの手首に巻いたミサンガから一本、少女と全く同じ紋様のミサンガを、取り出して見せた。
 少女は何も言わずレムリアを見ている。その目から溢れ出す輝きがある。判っている。“友達になろう”など言われたことがないのだ。
 レムリアは少女の手を離す。少女の腕がだらりと垂れる。しかし少女は動かない。
 二人は見つめ合う。ただ見つめ合う。その二人の髪を風が揺らす。
 下り勾配を減速しながら降りてくる、真っ赤な車体の普通電車。
 メロディ奏でるような電磁的唸り音と共にホームへと滑り込み、キュルキュルと緩やかに機械ブレーキを作動させて停止する。
 2両編成なので階段下の乗客達が慌てて走ってくる。
 客らが乗り込み、対し、下車客は一名。
 車掌の笛があり、ドアが閉まり、重ね打つベルの音が聞こえ、電車が動き出す。
 再びの電磁的な電車の加速音に混じり、下車客の足音が、二人に近づく。
 黒い装束に身を包んだシスター。
「苦しかったわね」
 声を掛けられたのが自分だと知り、少女はゆっくりと、目線をレムリアからシスターにずらした。
 
「十何年、誰からも、好き、と言ってもらえなかったなんて」
 
 シスターは自らの衣で少女の頬の輝きを拭う。
「いつもすぐに嫌われて、その都度親が乗り込む。でもそのたびに、友達は減って行く。周りにたくさんいるのに、孤独。それがどんなに辛かったか。おお神様、私はもっと早く、この女の子と出会いたかった」
 シスターは涙目で語り、数歩少女に近づき、膝を突いてしゃがみ、震えるその身を、腕と衣服で包み込んだ。
 少女が泣き出す。声を上げて泣く。まるで初めて泣くことを知ったように、大声で肩を揺らして泣く。
 シスターは少女の髪の毛をなでる。彼氏が彼女にするように、そのまま眠りに誘導するかのように、ゆっくりとした動きで、繰り返し撫でる。
 泣き声が聞こえなくなる。
「姫様から話は聞いたと思いますが。私たちを手伝ってくださいますか?どうぞみんなに話してあげてください。この町のこと。陶器や煙突のこと。みんな、遠くへ行けませんからね。とっても楽しみにしてるんです。遠い町の話。まねき猫生産数日本一の町。……このまま行きますか?それでも構いません。生活に必要な品々は向こうで揃います」
 少女のうなじが、小さく、うなずいた。
 そしてそのまま、少女は、雪の便りも近い北の地へ発ったという。
 
(つづく)

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