グッバイ・レッド・ブリック・ロード-191-
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レムリアは頷いた。やはり“母親経験”の有無は、子どもに対する見方・接し方を大きく変える部分が少なからず。……あの麻子という女性はその後どうしただろう。
そして。
「それで……その母親さんは?」
レムリアは訊いた。ちょっと変な日本語。
「ゲシュタルト崩壊」
坂本教諭は目を戻し、頬杖をついて、ひとこと言った。
「えっ!」
「自分を全部否定された上、大事な大事な“宝物”奪われたんだもの。バラバラにもなるでしょ。学校のカウンセラー通じて心療内科に急患搬送。……しかしあなた凄いね。ゲシュタルト崩壊で通じるんだもんね。まぁ、そっちの母子については、後は大人の仕事ってことで任せてもらって。児童相談所とも相談が必要だしね。ただね、あなたと相談したいことはまだ残ってるんだ」
坂本教諭は紅茶を飲み干した。
レムリアはその間少し待って、
「と、いいますと?」
「クラス替えしたほうが、って話が出てるのよ」
レムリアは失笑した。
「一足飛びにスクラップアンドビルドですか?」
「チェンメ持って相談に来た子が何人かいてね。もうクラスがぐちゃぐちゃだって。みんな次は自分が……て怯えてる状態」
“チェンメ”は“チェーンメール”の意味。回覧増殖された“攻撃を煽るメール”のことであろう。
「クラス崩壊の危機と」
「そういうこと」
レムリアはとりあえずカフェオレを全部飲み干した。
崩壊、は避けたかったエンディングではある。しかし、その一方で仕方ないとクールに感じている部分も意識の隅にある。なぜなら現状のクラスは“いじめを生み出した環境”だからだ。解決はその環境を破壊する行為に他ならない。従い、ある意味必然。
ただ。
「真由ちゃん由香ちゃんは困惑するでしょうね。自分たちのせいでと。そこぶっ飛ばしていきなりクラス替えはダメですよ。いきなり結論から来ますかねセンセイ方は」
(つづく)
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