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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-195-

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「そんな担任さんに私ってばえらそうに……」
「だから、それはそれでいいのよ。担任さんが既定路線継承の悪循環に陥っていたことは確かなんだし。それこそ『耳を傾ける義務がある』よ。さ、立ち話したら冷えるだけ。行きましょう」
 促されて坂道を下る。
 真由宅に到着すると……いつか来ると思っていたその瞬間が、ついに?訪れていた。
「あの……お姫様で」
 恐縮至極の父親。その傍らで携帯電話の添付写真を見せる由香。
「さっき……ばあちゃんからメール飛んで来た……んだけど」
 曰く、地元敬老会とケア施設との交流で、空港まで博覧会の回顧展を見に行ったそうなのだ。
 最早これまでである。坂本教諭は自分の本名を知っている。“写メール”には、その名前の部分が充分読み取れる解像度で、例のパネルがバッチリ写っている。
 言ってもいいタイミングが来た、ということなのだろう。おばあさまにだけ嘘をつくこともない。
 カミングアウトする。レムリアは正座し、ウェストポーチから身分証を取り出した。
「おばあさまに返信してもらっていいよ。“その姫ちゃんなら目の前にいるよん”って」
 由香がみるみる目を見開く。ちなみに口外禁止、とは加えなかった。目の前の由香がそうであるように、おばあさまがその瞬間、他の敬老会メンバーに何も言わず、驚きもせず、こっそり写真とは考えにくい。それに、そもそもタクシーでの会話あたりから、万博と自分との関係に薄々感づいてらっしゃった気配がある。
 すると。
「あなたメディア姫!」
 聞いてる方が驚くほど大きな声で、坂本教諭が言った。
「メディア・ボレアリス・アルフェラッツ……プリンセス・メディア。やっぱりあなたはお姫様……」
 聞いた名前と写真の名前が繋がったようである。
 
(つづく)

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