グッバイ・レッド・ブリック・ロード-196-
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「ええ、はい。申し遅れましてすいません」
「いいのいいのそれじゃぁ簡単には言えないわ……そう、博覧会で行方不明事件になったあのメディア王女……ああ、ああ、あの博覧会のあのお姫様……ウチにも来たよ講演会の聴講者募集……誰を推薦するか会議したよ、じゃない、しましたよ。いやあの数々のご無礼を……」
坂本教諭は興奮気味の口調と裏腹に、へたりこむように玄関先に腰を下ろした。いや、腰が抜けたと言った方が適切かも知れぬ。クールで理性的という印象が強かった故に、この反応は意外であった。
最も、差こそあれ、大人一般にこういう反応になる。そもそもあり得ないと思っていたことが現実に展開されるせいだろう。文字通り魔法を現実として見せられた現代人である。この女(ひと)の場合、クールだから尚のこと、の部分もあろう。
「その実態はこういう小娘です。後生ですから今まで通りお付き合い下さいませ」
だからカミングアウトはイヤ。
「でも……」
「私もずっとタメ口ですから。先生」
真由が言い、そして続けて、
「ピンチの姫様を助けに駆けつける白馬の王子様……の代わりに、赤い名鉄電車で姫様が駆けつけてくれました」
この手の小ネタはレムリアの流儀……であるが、真由は完全に掌握したようである。
レムリアはこれに乗って、
「あれ?私が乗ったの赤白だったよ。しかも立って来た。でね。先生連れてきたのは二人に相談。クラス崩壊の危機打開策」
レムリアはとっとと話題を変え、坂本教諭に目を向けた。
しかし。
「え?」
坂本教諭は、きょとんとした表情でレムリアを見返す。
「本質は何ですか!」
レムリアは膝をパンと叩いて強く言った。それはそれ。これはこれ。
(つづく)
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