グッバイ・レッド・ブリック・ロード-201-
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真由達のクラスが入ってくる。なお、二人はクラスに戻しておらず、ステージ袖で待機。
レムリアはクラスを一通り見回す。まず、お喋りが他のクラスに比して少ないのが如実に見て取れる。みんな下を向いたり、あって二人でひそひそ話程度。そこに連帯・一体感は存在せず、なるほど“ぶちぶちに切れた”イメージ。
そのクラスの中に……果たして大金の娘の姿を見て取る。
対面は二度目。しかも最初は逆光の中であり容姿表情はよく見えなかったが、すぐにそれと判った。まず外見が違う。濃い化粧をし髪の毛は赤茶色。レイヤード処理。ブレザーの前ボタンはだらしなく開け、ネクタイも緩慢。加えて、これは西日の中でも感じた、独特の“雰囲気”。
更にレムリアは彼女に他の生徒との違いを見て取る。一見すると他のクラスメート同様、うつむいて歩いており、誰とも口を聞かない点で同一だが、“目の挙動”が異なるのである。その目は己れへの視線を気にすると同時に、何か探すように、しきりと小刻みに動き、定まらない。何か意図を持っていると伺える。但し、敢えて超感覚で真意を探ることはしないでおく。なまじ知ってしまうと無意識に彼女に目が行き、彼女が感付く、という可能性もあるからだ。
一通り生徒が揃った。
ステージ袖から、ワイヤレスマイク片手の坂本教諭。司会担当。
「みんな今日は朝からありがとう。では、始めます。実は本校生徒が二名、ボランティア活動に参加し、こちらのお姉様、山路(やまじ)……」
「はい、そうです」
緩やかな口調で会釈するシスター。なお、“シスター”というのは、装束を纏った教会関係者で女性を意味する……的なニュアンスで使われることが多いが、実際には“人類皆きょうだい”的思想に基づく敬称の一種と捉えるべきである。姉様、兄様と互いを呼び合うのだ。当然、英語圏ではシスター、ブラザーとなり、日本ではそれが“呼称”として一人歩きしているのである。坂本教諭の“お姉様”はこれを踏まえる。但し無論、公立の中学校であるので宗教的意味は持たせていない。礼儀だ。
(つづく)
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