グッバイ・レッド・ブリック・ロード-205-
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由香はミサンガの手首を高く掲げた。それは“再び”の約束であり、“ずっと”の誓い。
すなわち。
「あきらめちゃだめなんだって思いました。そして、任せっきりじゃだめなんだ。自分が出来ると思うことは、どんな小さなことでも、出来るだけやってみるんだ」
大きな決意は尾を引き、聴衆の瞠目を呼ぶ。
「そうよく聞くセリフ。私もそうです。だからいつも、あーハイハイ毎度おなじみ、くらいに聞き流していました。
だけど今回、それが本当に大切なんだと、身にしみて、判りました。そして何より、自分だってやろうと思えば出来るじゃん、そう実感出来たことが収穫でした。この先試験勉強、受験勉強、色々ハードルはあるだろうけど、自分は必ず乗り越えられる、そんな気がします。当面は期末テスト。終わったら、このミサンガのみんなに、会いに行くつもりです」
息継ぐ間に拍手が起ころうとしたが、由香が言葉を繋いだため、拍手は収まった。
「あと、これは皆さんにお願いです。皆さんの中にも、おじいさん、おばあさん、血圧が高いといわれているおじさんおばさん、ひょっとするとお父様やお母様でも、そういう方があるかも知れません。妊娠している女の人でも、起こることがあるそうです。応急処置なら、難しい知識が無くても、私たちでも、出来ます。おろおろするだけとか、救急車は呼んだけど待つしか出来ないよりは、きっといい、そう思います。覚えてみては、如何でしょうか。……なんか取り留めないけど、私の率直な、学んだこと、です」
一礼すると拍手がわき起こる。涙する女子生徒の姿もある。確かに彼女の語り口は“優等生”が紡いだ物に比し、構成も文体も拙い。尻切れトンボであるかもしれない。だが、思ったままを飾らずに言ったことが、逆に共感を誘った部分も大いにある。
(つづく)
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