グッバイ・レッド・ブリック・ロード-206-
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マイクは真由へ。次第次第に二人が聴衆を引き込んでいることをレムリアは強く感じる。
「確かその次の病院だったと思います。その病院の看護師さんに声を掛けられました。サプライズで誕生会をやりたいから協力してって。誕生会。皆さん、中学入ってからそんな事やってますか?」
問いかけに、聴衆は少しざわついた。そんな小学生みたいな……ニュアンスの微笑がそこここに。
ちなみに、単に聞かせるだけ、から、次第に応答を求める形に持って行くのもレムリアの流儀。
「次の誕生日が来ないかも知れない。そんな風に思ったこと、ないですよね」
聴衆が水を打つ。言葉の真意が次第に判ってくる。
「私たちには当たり前の毎日毎日が、訪ねたみんなには当たり前じゃない。私たちは月曜の朝が来ると、早く金曜にならないかなって思う。でも、みんなには明日が来るかどうか、それどころか、今日が終わるかどうか、それさえ不安」
「私たちと同じ年齢です。同じ学年です」
由香が付け加える。
感受性の強い子はこれだけで事態の深刻さが判ったのだろう。すすり泣く声が聞こえ始める。
「私たちも最初、病院スタッフから説明を受けたとき、そうやって泣きました。涙が出てきて、後から後から出てきて、止まりませんでした。可哀想、そればっかりでした」
「でも、それを、病院のみんなに見せるのは、とても残酷なことだって、気が付いてゾッとしました」
「だって、あなた可哀想ねって、言ってるようなものだから」
すすり泣きが、無理矢理、に近いような形で、収束した。
「みんな、目標を持ってました。今日はこの薬を飲む。この治療を受ける。明日はこんなリハビリ。皆さん、そんなことしてます?学校うっぜぇな、早く終わらなねぇかなぁ」
(つづく)
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