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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-209-

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 殺したいほど邪魔なのではない。邪魔だから殺すのだ。
 しかし……レムリアは指先に意を込めながら自問する。同じ“幼い子を道すがら蹴り飛ばす”二人が、片や人目を避けて線路から飛び込もうとし、こなた衆目の中でナイフを振りかざす。
 その違いはどこに?……
 一つ言えるのは自殺未遂の娘にはそれでも“親”とのつながりがあった。彼女が駅へ向かうきっかけとなったイタズラ電話は、言うなれば“親とのつながり”を断ち切るという宣告であったと言える。誰からも嫌われるが、少なくとも親は……歪んでいたとはいえ……絶対の守護者ではあった。わがまま放題は少なくとも心の拠り所としての効能はあったのだ。イタズラ電話はその拠り所を引き剥がしたため、彼女は行き場を失ったのである。
 対し、この娘の場合は
「人のカネでさんざん遊んでおいてチクリかよ。おめーよ」
 現金。
 打出の小槌状態でもたらされる現金。
 意のままになり、欲する物を欲するままにもたらす、具象化された欲望。
 命と、打出の小槌と、天秤に掛けた結果、彼女はナイフを手にした、とすれば、端的な説明は付けられる。
 いやひょっすると、天秤すら用いていないかも知れない。結果がどうなっても……更正施設送りになろうが阻止されようが……それは間に“少し長い時間”が入るに過ぎず、打出の小槌に変化はない。
 
 殺しても損はしない。 
 
「言ったのは私だよ?」
 レムリアは友に語りかける口調で、フランクに言った。
 とにかく自分に引っ張るのだ。刃先を二人から逸らす。それは、船の男達が、ゲリラの興味をキャンプの食料から外す際に使った手。
 すると、ナイフの少女は、バネが弾けるような動きで、レムリアに顔を向ける。
「おめえ……」
 
(つづく)

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