【妖精エウリーの小さなお話】花泥棒-7-
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「翅があるのに天使じゃないの?」
「妖精って言うんだ。聞いたことない?」
するとかおるちゃんはゲームの中に出てくると答えました。説明してくれた姿形からドワーフのようです。
「お姉ちゃんはどんな魔法が使えるの?」
魔法というよりはいわゆる超能力です。背中の翅はケルトの伝説で知られるフェアリから。人間サイズの背格好はギリシャ神話のニンフから。
「ジョンがかおるちゃんのことをとっても好きだったことが判るよ」
私はそう言ってかおるちゃんの傍らにしゃがみました。
「……ジョン、埋めても起きないんだ。ちゃんとお花あげてるのに」
「死んじゃったからだよ」
私のこの物言いはストレートに過ぎるかも知れません。でも、言っても彼女から特段の反応は出ないであろうと判っていました。テレパシーで?いいえ。
「だから埋めてお花あげてるんだけど?」
すると妖精達が蘇らせてくれるんだ、とかおるちゃんは加えました。
「お姉ちゃんはできないの?」
純粋な瞳で覗き込まれてしまいます。
妖精自体は不老不死とか不死身とか種族様々です。かくいう私も19歳の姿のまま200年近く生きてます。1000年近く生きるらしいです。つまり寿命はあります。ただ、ここが天国の片隅という事実から明らかなように、魂の不滅性を知っています。
そして不死身かどうかですが、ケガはしますし、翅伸ばしてる時に破られるとそこから体液を失って動けなくなるので、死ぬという事態は訪れるようです。ただ、生命の危機を乗り越える力はその超能力によって桁違いなのは確かです。
これらの属性が〝生き延びること〟が最大の使命である生き物たちの相談相手として相応しいかというと、自問したくなる時がままあります。
でも、死について感じる思いは他の生きとし生けるものと同じと聞かされています。だから、私たちは私たちに与えられた範囲で思いを信じ、相談に乗るだけです。
その信じるところの教えるところによれば、かおるちゃんは〝死〟という現象の不可逆性を理解できていない。
「ジョンの他に動物を飼ったことは?虫を育てたことは?」
ない。物心ついた頃から、母と娘と犬一匹。
父親という存在がどういうものかもピンと来ないようです。
「天にまします我らの父よ」
かおるちゃんは父という存在についてはそう言いました。
それはある意味、生死を超越した世界観なのかも知れません。
(つづく)
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