グッバイ・レッド・ブリック・ロード-223-
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「ルール破ると怒るぞ!と言えばいいと思ってる。言い聞かせれば言うこと聞くと思ってる。振り返ってお前達どうなんだ。そんな私たちの言うこと聞いてくれないじゃないか。そんな不公平なことあるか。
だから。私たちは言わなくちゃだめ。あしらわれてもはぐらかされても、噛みついてしがみついて、耳のそばでデカい声出す。いいかこの毛の生えた耳の穴かっぽじって良く聞けって。
いじめられてるみんな。こいつらそんなわけで鈍感バカだから、そぶりで気付いちゃくれない。いじめられてるって言うだけでもだめ。子ども同士の些細ないさかい程度にしか考えない。だから、こう言って。学校のこと考えるだけでイヤだって。あんな学校行くなら死んだ方がマシだって。じゃあ学校行かなくていいって返ってくるまで、言い続けて。そして、それでも聞いてくれなかったら、学校行かなくていい。行くなそんなところ。何わざわざニコニコ装って傷つけられに行く必要がある。籠城して徹底抗戦。親だもん、遠慮することあるもんか。親なら子どもの言葉聞け。親なら自分の子ども守れ。聞いて理解してそれから答えろ。聞き終わる前に決めつけるな!判ったつもりになるな!
それから、悪口言った、悪口書いた、嫌がらせした覚えのあるヤツ。多分、お前らが考えてる以上にその言葉は誰か傷つけた。気持ちいいかい?だけど普通に考えな。口から毒吐く人間誰も好きになってくれない。傷つけて覚えた快感の分だけ、付けた傷の深さの分だけ、お前らは嫌われる。断言する。大体、お前ら自身、自分のことアホバカ言うヤツ好きになるか?マゾか?違うだろ?おっと、ひとりで生きて行けるから関係ねぇとか思い上がるなよ。誰のカネで飯食ってんだお前ら。ひとりで生きてると主張したいなら事実で示せ。一国一城の主になって、テメエでカネ稼げるようになってから言え。そうでないなら被扶養者として粛々と義務果たせ。親にぶら下がってる分際で態度でかいよ。おとなしく口閉じて、呪文を唱えろ、ごめんなさいって。それから、何で口から毒を吐きたくなったか、誰かに言え。お前の秘密を守ってくれる誰かに言え。言うだけでいい。そうなっちゃっただけなんだ。だから秘密を話してくれる限り、誰もお前達を咎めない。
その誰か……実は学校の先生って存在にはそうなって欲しいんですけどね。毎日、毎年、同じことの繰り返しのルーチンワーク。ええご説ごもっとも。でもね、過ぎ去って行く私たちから見れば、かけがえのないたった一度。そんなある日、勇気振り絞って恐る恐る告白すると言い返される。いじめられる方にも問題あるんじゃないのか。仲介はするから自分で何とかしな。
蹂躙ってコトバ知ってますか?でも何が蹂躙に値するか知らない。え?そんなことはない?そういう風にしか見えないよ。多面体ゲシュタルトがカシャーンと砕ける。言ってること判らない手合いは教員なんかやめて出てって。硬くてもろいダイヤモンドを扱える人間じゃないから。私ら、自分が否定されるとひどく傷つく繊細な10代なんだ。
だから、お願いだから最後まで話を聞いて下さい。途中で遮らないで。遮ってそれはこうだろと急いで結論づけようとしないで。確かにあなた達は経験豊富。一を聞いて十が判る。前にもあった話でしょう。あーあーそうか、判ったもういい、それはこれだよ。恐らく正解かもしれない。
でも、その時と今そこで話している生徒は違う。人間はロボットじゃない。一人一人皆違う個性を持った独立人格。全く同じなんてあり得ない。だから、あなた達の決めつけは絶対に正確ではない。似ていても少し違う。同じようでも微妙に違う。最後まで一通り聞いて、経験発揮して欲しいのはそこから。こうじゃないの?こうとちがうの?こういう視点だとどうかな?って。コミュニケーションってそういうもんでしょ?
そして、話して来ない生徒がいたら、話を振って上げてください。おう、お前何が好きだって言ったっけ?……実際そんな話したコト無くてもいいんです。それでも構わないんです。話しているのが当たり前、そんなつもりで言葉を掛けて。何も言って来ないから問題ない……良く聞くセリフ。でもそれ本当でしょうか。言えないだけかも知れない。話してくれと言っても、内容が大事であれば大事であるだけ、過去に付き合いのない人に話を振ることなんか出来ない。初対面に人生相談しますか?
私の彼氏……でもキスすらしてませんよ……仕事人です。でもまだ研修生という分際です。夏まで毎日、製造ラインで電子回路作ってました。その彼がこう言われたそうです。『製品チェックはOKかどうかを見るんじゃない。NGを探すんだ』って。何もないからOKだ、これじゃNG見つからない。見つかった時は手遅れリコール……でも人間にリコールは効かない。言ってる意味判りますよね。
もちろん、それを生徒何十人。確かに凄い手間でしょう。それは理解します。書類作りだ授業の準備だいろんな雑務、持って帰っても終わらない。センセイという職業のストレス聞いて知ってます。だけど、ここで先生達に勇気が欲しい。そういうことで進捗だ何だグチャグチャ言う上司がもしいたら。逆に言い返して欲しい。その書類の期限と子どもの心、どっちが大事だって。手遅れになって危険なのはどっちだって。学校の主役は誰だって。
生徒達みんな環境バラバラです。家庭のこと訊くと口をつぐむ子もいるでしょう。でも、先生という存在だけはクラスにいる限りみんなに平等。その先生が砦になってくれなければ、生徒達ドコに身を寄せるの?子どもに頼られる大人こそ、野性の生存本能を残す子どもに慕われる大人こそ、生命体人間として最強というのが私の認識ですが間違ってますか?」
(つづく)
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