グッバイ・レッド・ブリック・ロード-226-
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生徒達、ひいては教員達の目が自分に集まっていることが判る。メタモルフォーゼのナイフの少女もぽかんとばかり自分を見ている。少しすすり泣くような声もある。
伝わった。それが実感。
守った。それは満足感。そう多分、自分はこの愛しい友なる娘達がこれ以上傷つくであろうことを防いだ。いつだったかベンガル湾岸で船が着くまで2時間、幼子の心マッサージを続けて命を繋いだことがある。やはりミラクル・プリンセスだと自分のことを皆が囃した。でも今思えば、それは単なるテクニック。方法と体力と、少しだけ違うならトリアージ(※)突っぱねて諦めなかったことだけ。例えばロボットでも出来る話。
だけど、心はそうは行かない。心は、心でしか動かない。心の持ち主が自ら動こうと思わない限り動かない。
その観点からこの注目はまず間違いなく。後は、あの感謝状と一緒に、記憶しておいて、伝えてもらえばそれでいい。そうすれば今後いじめが起こらないとまでは言わない。というかそれはあり得ない。でもその芽はすぐに見つかり、摘まれる。
背後演壇を振り返る。並ぶ生徒達と同様に、演壇から自分を見ている友なる娘達。
「ごめん、イベントジャックしちゃった」
笑ったつもりだが笑顔になったかどうか。頭がふらふらして身体に力が入らない。脳の指令に対し、言葉や、手足の動きが少し遅れている気がする。
「ううん、ううん、そんなこと……姫ちゃんどしたの?顔色悪いよ?」
心配そうな真由の顔は覚えている。
「ああプリンセス!」
「メディア姫!大丈夫ですかメディア姫!気を確かに……」
シスターと、坂本教諭の声は聞こえた。
そこから先の記憶がない。
※トリアージ(Triage)
元はフランス語。災害医療において、その場の救命資材、人員に基づき、傷病者を重症度と緊急性によって分別、救命処置を施す順序を決定する方法。
(つづく)
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