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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-230-

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 抱きしめてしまうと、彼女は泣いた。キチンと本人の口から相手の顔見て言うべき、それは譲れないというのが持論。親との連名でもらった書面がその前段階、なら、受け取ってもいい。
 でもまぁ、急かせば彼女は自身を責めるであろう。そこまでするつもりはない。自分と会っただけでも大きな変化だ。なら、いずれ本人にも、となろう。
 ひとりで抱え込むと苦しいよ。レムリアは自分のメールアドレスを伝え、引き上げた。
 そして日曜日。
 恭しい言葉遣いの白髪、或いは禿頭の紳士数名が、紋付き姿で真由宅工房を訪のうた。
 応対に出た父親が目を剥く。その数名の中心に集合展の審査委員長にして重要無形文化財……すなわち人間国宝某氏の姿があり、頭を下げたからだ。
「……せ、先生!?」
「博覧会の、姫君が、こちらにと、伺いまして」
 敬語を使うべき立場の人物に、逆に敬語を使われ、真由の父親は目を白黒。
 ちなみに人間国宝氏の耳に“ホームステイプリンセス”の情報が入ったルートは、由香の祖母が加わった団体に陶芸愛好家がいて……という次第。
「あ、ああ。そういうことですか。ええ、確かに。その方ならウチに。お、お~い、お姫さんちゃん」
 無茶苦茶。
 その時刻、レムリアは真由のパジャマを借り受けて寝ていた。こういうの寝耳に……何だっけ。
「ちょ、ちょっと待って頂けます?」
 正装で見えた相手にぶかぶかパジャマでもあるまい。かと言って、フォーマルな服装は借りる必要があるのは前述の通り。
 そこで真由がぶっ散らかしたのは何と麻子の衣装ケース。号数1つ違うが、リクルートスーツとおぼしき紺色で地味なスラックスとジャケットが発掘された。
 しかし、それがショートカットにピタリと合致してクールに決まった。
 
(つづく)

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