グッバイ・レッド・ブリック・ロード-231-
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「か、かっこいい……」
真由が呆然。
「そお?」
レムリアは姿見の自分を見る。袖なんか少し長いし、肩もズリ落ちやしないかという感じなのだが。
「しかし麻子さんの服……」
フクザツ。
「似合ってればいいんじゃない?」
「ああ、有効活用ってヤツだよ」
娘と父はあっさり言った。それは一聴すると非道い発言のようにも思えるが、
「あいつ、携帯置きっぱなしだから、どうにも連絡が取れないんだよ。そのくせ公衆電話の着信がちょくちょくあるんだ」
「あの女(ひと)、服のたたみ方ヘッタクソでさ。一旦クリーニング出そうかと思ってたんだよ。そのスラックスだってホラ、後ろ2本線……」
それはさておき、待たせた客人の前に出向く。タタミの上で正座し応対。
「……私が。ですか?」
人間国宝氏の来意を聞き、レムリアは自らを指差し、問い返した。
「ええ、今般の姫殿下のご光臨は、本来は、この街に焼き物をお探しにいらした。と伺いました。殿下御自らのご意向とは光栄の至りここに極まれりと存じまして。まこと急ではございますが、本日の表彰式にご臨席賜ればこの上なき慶びと、無理を承知で伺った次第でございます」
人間国宝氏に頭を下げられる。腰に負担がと心配になるほど平身低頭。
やめて……壮大スケールの敬語の連発。痒い。私は普通のお転婆娘ですって。それに。
「でも私は陶器は無知ですよ。何となくいいなと思っただけですし。物知らずが偉そうに皆様と一緒にいるのはそれこそ恥知らず」
一応は断りを入れてみる。しかし……予想通りと言うべきか。
「いえいえ。殿下が常滑焼きに興味を持って下さった。その殿下抜きでどうして式が成立しましょうや」
聞こえないようにため息一つ。自分が出る意味付けが判らないが、重鎮と呼ばれる地位の方であろう。その方がここまでして。
(つづく)
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