グッバイ・レッド・ブリック・ロード-232-
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それは言うまでもなく、自分がここで駄々こねて拒否したら、この方々の面目は丸つぶれということ。無論、真由の父親にも悪影響が及ぶであろう。
……大人の奸計、は言い過ぎか。ちなみにそれこそ、博覧会の時には自分の方が大人を出し抜いて振り回した(それなりに楽しかった)わけだが。
因果応報とはこのことか。
「承知致しました。場所と時間を」
レムリアは目を伏せて言った。傍らで真由の父親が安堵している様子。ただもちろん、単に行って、その場に座って、ニコニコしてれば事が済む。とは思えない。
昼過ぎ。
表彰式の会場は空港のイベントホールであった。自分のでっかいパネルがバックにセットされ、地元テレビ局のカメラまで入って、相当、大々的に開催された。レムリアは文句なくサプライズゲストであり、紹介されて入場すると、詰めかけた観客は大げさなまでにどよもした。
しかも、これも予想通りと言うべきか、受賞者が次々握手を求めてくるので座っていられず、しまいには人間国宝氏の傍らで副賞を手渡すアシスタントプレゼンター状態になった。
なお真由の父親は“奨励賞”……要は佳作であった。
「望外だ」
それでも真由の父親はそう言って喜んだ。悩み抜いた末の夜明けの触発。急ごしらえの割には……の受賞だったせいもあるだろう。ちなみに作品は茶碗で、名を“早暁の獅子”。自然釉の青緑と、朱泥が窯変した赤黒が、ちょうど夜明け直前の空のようなグラデーションを描き、火の粉と共に飛んだ灰のせいか、釉が幾筋か、流星の如く表面に走っている。
一通り盾やら賞状やら行き渡った。
司会者男性がマイクを取る。人間国宝氏と何やらひそひそ。
そして。
「それでは、折角ですので、わざわざ常滑の茶器をお求め、とのことでおいで下さっている、メディア・ボレアリス・アルフェラッツ王女殿下に、常滑焼きについて、一言頂ければ幸甚に存じますが……」
(つづく)
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