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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-236-

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 結論に行く。タイルの話は内容が内容だけに、言わなくても皆さん調べるだろう。
「戦争に負けた。というのも理由にあったかも知れません。押しつけられる物を拒めなかった。でも、日本の皆さんは、ただ唯々諾々と従うでなく、排除しようとするでなく、それを良い機会と捉え、より良くしようというポジティブな反応で生かした。……凄いこと言いますよ。今ご承知の通り日本は周辺各国から追い上げを受けてます。太平洋の向こう側からダイトーリョーさんがムチャクチャ言ってきます。今までの繰り返し……では、先行き不安な情勢にあることはご存じの通りです。そのタイミングで、この街に空港が出来た。世界への窓口が開かれた。たくさんの人々がやってくるようになった。これは再び、この街が原点となり、“常滑から世界へ”発信せよ、という、大いなる運命の配剤ではないでしょうか」
 ちょっと大げさか。
「なんてね」
 微笑むと、安堵感のある笑い。
「大仰ぶりましたが、そんな世界への窓持つ街で、ダイナミックに日々変化する時代の中で、こんな素朴でシンプルで、道具の原点と言ってもいいような陶器達が作られているのは、何か意味ある気がしてならないのです。だからこそ、人々が集まりつつあるんじゃないかって。表現の仕方はどうあれ、みんなこの街が好きなんだ。赤いレンガの煙突と、小道の土管と、感じ方はそれぞれだけど、みんなこの街が好きなんだ。そうだとすると……冒頭わたくし申しました、“げっ”は取り消さなくてはならない」
 人々にハッとするような表情が見て取れる。
 そう。言いたいのは
「この街が好きな人間が、この街を好きな人中傷してどーすんの」
 それは声に出した自戒。
 会場がしん、となる。
 レムリアは小さく笑った。
「偉そうなこと言いました」
 少し拍手。
 
(つづく)

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