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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-239-

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「ではありがたく頂戴します」
「申し訳ないね。そんなので」
「そのかわり」
 レムリアはミサンガを父親の手首にも結んだ。
「私もかい?」
「今度こそ買いに来ます。それまでにウデ磨いておいて下さい。カネ出して買いたい、と思うような」
「言うね」
 唇の端に、しかし自信の笑み。
「姫ってのは古来小生意気ですから」
 レムリアはツンとお澄まし。
 深夜まで真由と喋って過ごす。メールアドレスを交換。
「帰っちゃう……だよね」
「すぐ来られるじゃん。メール一発」
「……ってあなたの場合、子供だましじゃなくて本当にすぐ来るもんね」
「そうだよ。姫君ウソつかないから」
「ねえ、送って行っていい?……船の皆さんにお礼をしたいから。あと……ご一緒させてもらうには私じゃまだまだ」
「もちろんいいよ。じゃぁそこの公園に下りるよう言うよ」
 姫ちゃん送ってくる、と一言残し、真由は家を出る。
 父親もまたおいでと一言返すだけ。
 二人は細道を歩き、階段を上がり、二人が最初に喋った公園に立つ。
 周囲は住宅が建ち並んでおり、暴風が出せる環境ではない。どうするかと思ったが、シールドを解いて現れたその姿は、公園が斜面の途中にあることを利用し、帆を広げて滑空してきた。
 セイルの角度を変えて空気ブレーキ。
 重量感を感じさせぬ動きで、ふわりと軽く風を起こし、二人の前に降り立つ。遠く空港島の燦然たる灯火を弾き、雪面のように白銀に輝くソーラーセイル。
 他方、東の空低くには遅く昇ってきた月と、その光に蒼く浮かぶレンガの煙突。
 その影が伸び、船体に柔らかく落ちる。
 フェンスで囲まれた小さな公園に、窮屈そうに巨体を収め佇む宇宙航行帆船。
 未来技術を蔵した甲板を横切る、19世紀の影。
 昇降口が開き、友達同士の別れの挨拶。これで二人の間はユーラシアが隔てることになる。
 しかし、意志だけならメールで瞬時。ましてやこの船がある。
 二人には、距離も時間も壁にはならない。
「じゃぁね」
「またね」
 それでも出発には最小限空気の噴射が必要であったか、一陣の風と共に、光の矢が駆け抜ける。
 
(次回・最終回)

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