【妖精エウリーの小さなお話】花泥棒-8-
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〝死〟の存在を知るより先に神様の存在を理解するのは、死に対する恐怖から逃れたある意味幸せ、魂の自由を得た状態なのかも知れません。
私たち形而上の存在が抱く心理に近いのかも知れません。
でも、地球に生まれた生き物として、その状態は妥当なのでしょうか。
「教会では死んだ人はどこに行くって教えてもらったの?」
「神様のところ」
「動物は?」
「神様のところ」
「行ってみようか」
「うん!」
かおるちゃんは即座に頷いてニッコリしました。この辺り人間さんの常識に照らして凄い会話と言えるでしょう。ただ、私の言った〝神様〟はヤハウェではなく、大地の女神ガイア様。
すなわち地球の精霊。
かおるちゃんには食事を摂ってもらい、その間にアポイント。ガイア様とは言え、いきなり、普通の人間の女の子を連れて行くわけにも行きません。
ただ、直接会われることがないではないのです。神隠しという現象をご存じの方は多いと思いますが、その中で帰ってきた子どもが〝神に目覚めた〟パターンは、必要があって形而上側から働きかけた場合が多いのです。
考えながら、ああ、と私は一人納得しました。恐らくは、今私がこうしてかおるちゃんを連れてきたのもそうした神隠しの一つなのだ。
果たして管理部門からの反応は二つ返事。私の信じる通りに行動し御前へ。
フェアリーランドから黄泉の方の天国へ飛ぶことにします。かおるちゃんを抱きかかえ、石を握って呪文一閃。……申し訳ありませんがこの呪文はお教えできません。
テレポーテーションの要領で次元転移した先は大理石の街並み。
古代ローマ風の、と書けば端的な説明にはなるでしょうか。噴水を要した円形の広場です。
そこに集っているのは。
「これ……」
かおるちゃんは目を瞠り、そのまま唖然。
道を行くのは頭部だけ動物のそれに変わった多種多様な人々。
ケンタウロス、ミノタウロス、そして狼男など、獣人、半獣半人にまつわる伝説は説明する必要も無いと思います。
ホモサピエンスに分類される人がここを見たならば、応じた反応を示すのが当然ではないでしょうか。
(つづく)
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