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【妖精エウリーの小さなお話】花泥棒-9-

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 私たちの存在を見つけた彼ら獣人……動物形ヒューマノイドたちが集まってきます。
〈人間さん?〉
〈妖精さんだ〉
〈妖精さんと人間さんだ〉
 彼らはコミュニケーションに声と言語は用いません。テレパシーによる意志の交換のみ。
「この女の子が別れた犬と会いたがっています。誰か知りませんか?」
 私は言ってかおるちゃんの記憶にあるジョンのイメージを彼らに送りました。
 チラシを配るようなものです。そして受けた彼らはその情報をインターネットの発言デバイスのように仲間内に広げてくれます。
〈犬か〉
〈オレは知らない。誰か知ってるか?〉
〈犬なら関係ない〉
 猫はクールです。
〈動くより、ここでこのまま少し待ってるといいよ〉
 誰かがアドバイスをくれました。
「そうするよ。ありがと」
 私は答えて待ちます。
〈妖精さんが来てるよ〉
〈妖精だってよ〉
〈人間の女の子もいるぞ〉
 そうした情報も飛び交います。応じて広場に集まる動物形ヒューマノイドが増えて行きます。
〈人間なんか何がいいんだ。オレは絶対ここから出ないぞ〉
 そんな声がして、広場の(心の)ざわめきが静まりかえりました。
 一同の視線が広場の奥方に集まります。ずいぶんと汚れた感じの痩せた犬です。
「あなた病気じゃない」
 それはかおるちゃんでした。
「お姉ちゃんここに病院は?」
「気持ちが身体の状態に出てくるの。だから、あの子は心が病気」
 身体と見える物は心が形になっているだけです。その筋の用語で霊体とか幽気体とか。
〈妖精さんは黙っててもらおうか〉
「人間が憎い……」
 私は彼の気持ちを知って口にしました。
〈ああそうだよ。売れるからって無理矢理子ども産ませてちょっと他と違うからって捨てやがった。人間とは真のパートナーになれる。そう聞かされていたんだがね〉
 
(つづく)

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