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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-238-

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 実はこの街の“現況”について、坂本教諭が少し口にしていたが、それよりもう少し調べた上で、聴衆の反応を見ながらレムリアは喋った。もちろん、既存のモノに異分子が加わるという視点も踏まえてある。その点でこの街に来て、真由のトラブルに遭遇したのは思い返せば運命だったのかも知れない。
 太古と現代が反発し合う物でなく、プラズマと化して他と反応しながら融合し、新しい何かを生み出す。
 その素敵な胎動を、レムリアは今この拍手の渦に見ている。
 イベントは終わった。
 帰るのは夜と告げたら、じゃぁそれまでと色々ご案内。例の小道はもちろん、“陶磁器会館”でレクチャー。巨大な甕があるので古い物かと思ったら。
「2次大戦中のロケットエンジン式戦闘機の燃料保管用です」
Bjuilmpciamemps

(「ロ号大甕」)

 聞けば戦争後半は資材不足で、本来金属で作る容器も陶器で補った、そんなのが多いとか。
 解放されたのは空港レストランで和食フルコースをご馳走になった後。出発案内には夜間飛行の長距離便がズラリと並ぶ。
「どの便で……」
「いえ、表示はされないんですよ」
 それに荷物が真由宅に、と言ったら、タクシーで恭しく送り出された。
 到着してGパン姿に戻ると、真由の父が手のひらサイズの桐箱を差し出して寄越した。
「お持ち下さい」
 中には早暁の獅子。
「いけませんそんな」
「いいえ。まだ私たちは、肝心かなめの貴女に正式なお礼をしておりません。貴女は真由はもちろん、迷いうろたえる私までも救って下さった。そんな貴女に、今我々が用意できるのはこれだけです」
「でもそれは宝物では」
「だから、です。宝物は、相応しいと思う方に差し上げるべきであると思うのです」
 返答に困っていると、
「持ってってよ」
 真由が言った。
「これだけの友達。私にとって宝物。宝物の引き替えは宝物にしかつとまらない」
 ミサンガをシャラシャラさせながら、真由はニタッと笑う。
 そう言われてしまうと、……仕方ないなぁ。
「判った」
 レムリアは言った。
 
(つづく)

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