【妖精エウリーの小さなお話】花泥棒-11-
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〈見て判らないかい?君が庭に埋めた僕は、そこでこういう状態なのさ〉
「だから、お花をあげてるよ」
〈そのお花はどうなってる?花はしわくちゃになって、茶色になって、やがてボロボロになるだろ?僕だって同じなのさ。そしてやがて骨になる。骨もやがてボロボロになる。横を向くから良く見てごらん〉
ジョンは身体の向きを変えました。もう腹部は骨が出ていて、向こう側が見えます。
〈判ったかい?ここは空っぽなんだ。そして、この空っぽがだんだん広がっていって、僕の全部が空っぽになって、骨だけになる。そのことをかおるちゃんが気付いてくれないと、僕は神様の所へ行けない〉
「行けないと……どうなるの?」
〈骨だけじゃ動けないからね。骨だけになって、そこで止まったままになる。ずーっとずーっとそこで止まってる〉
彼の物言いが、〝死を許容しないと死んだ側も浮かばれない〟と言われる内容であることが段々判ってきました。
〈お前よぉ。おい小娘〉
マーストリヒト男爵がかおるちゃんを呼びました。
「あたし?」
〈そうだよ。お前、こいつを神様の所へ連れて行ってやれよ。見た限り、今すぐ神様の所へ動き出したとしても、着く前に骨だけになるぜ。お前、こいつを、ずーっと動けないひとりぼっちの石にしてしまいたいのか?〉
オカルト用語の〝地縛霊〟という言葉をご存じの方もあると思います。
また、骨は単なるカルシウム。化石という意味もありましょうか。
「ひとりぼっちで……動けない……」
かおるちゃんはつぶやき、そして少し考えて。
「判った、ジョン、行こう。」
その時。
ジョンの、後ろ足が、外れてしまいました。
「あっ……」
〈言わんこっちゃねぇ。妖精さんよ。こいつの身体を袋に入れてオレの上に載せろ〉
「でも」
-放っておくと、この子の精神に異常を来すような事態になるぞ。
「判った」
私は手品の要領でトガをもう一着取りだすと、ジョンをぐるりとくるみ、顔だけ出した状態で、男爵の背中に乗せました。
〈ガイア様の王宮はどっちだい〉
(つづく)
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