2021年9月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

最近のトラックバック

めーるぼっくす

無料ブログはココログ

« 【魔法少女レムリア短編集】東京魔法少女-6- | トップページ | 【理絵子の小話】出会った頃の話-4- »

【妖精エウリーの小さなお話】花泥棒-13-

←前へ次へ→
 
 男爵が皮肉と憎しみを感じるコメント。
 その背中のトガの中から……恬淡と書きましょう、落ちたのはジョンの左足です。
 ちぎれたのです。
「よこせ」
「だめっ!」
 かおるちゃんは骨だけ犬の前に立ちはだかりました。
「いいじゃねぇか。死んだんだろ?」
「ジョンは食べ物じゃない」
「死んだら食われて誰かの命になる。それが野性の掟だ」
 嘯(うそぶ)く。骨だけ犬の言いぐさはこの言葉がピッタリ。
〈お前が食って……どうなるんだよ、がらんどう〉
 男爵が吐き捨てるように。
「何だと!?」
 侮辱に聞こえたようです。骨だけ犬は男爵に噛みつきましたが。
 骨だけ犬の歯は何も噛むことが出来ず、男爵の身体を素通りしてしまいます。
 しかも、歯と歯が合わさったように見えたのに、カチンという音さえしません。
 骨だけ犬は姿こそ見えますが。
 私がかざした手は、骨だけ犬の身体を素通りしました。
 彼には〝実体〟が無いのです。
「へぇ!見えるのに触れないの?変なの、影みたい」
 かおるちゃんの言葉は単なる事実であり、基づく感想です。
 ところが、骨だけ犬はひどくショックを受けたようでした。最前の勢いはどこへやら、バラバラに砕けるようにしゃがみ込んでしまいました。
「オレは」
〈死んでるんだよ。だから〉
 男爵は極めて率直に言いました。肉声を出せる骨だけ犬が実体を持たず、テレパシーが通話手段の男爵には肉体の感覚がある。
〈こいつらは特別さ。ガイア様の気まぐれだよ。お前にモノを食うということはできないぜ〉
「それは本当か、翅人間」
 骨だけ犬は私に尋ねました。
「ここにいるということは、肉の身体を失ったということ。ありつづけることも、なくなることも、再び肉の身を持つことも、全てはあなたの気持ち次第。でも……その身体は特にこうしようという気持ちが無い結果に思えます。歩かなければ、永遠にそこにとどまるだけ。私たちはこれからガイア様の所へ行きます。生きることと死ぬことはどんな意味があるのかお話ししたくて。一緒に来ますか?」
 
(つづく)

« 【魔法少女レムリア短編集】東京魔法少女-6- | トップページ | 【理絵子の小話】出会った頃の話-4- »

小説」カテゴリの記事

小説・妖精エウリーシリーズ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【妖精エウリーの小さなお話】花泥棒-13-:

« 【魔法少女レムリア短編集】東京魔法少女-6- | トップページ | 【理絵子の小話】出会った頃の話-4- »