【魔法少女レムリア短編集】東京魔法少女-3-
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むろん特殊な能力である。その筋の用語でサイコメトリといい、持ち物から持ち主の情報を読み取るというものだ。
「うん。ハリーがいつも必ず行く場所ってないかな?」
「あっ!」
心当たりがあるのだろう。彼女の問いかけに、女の子は円い目を見せて走り出した。
振り向きざま、交通量の多い大通りへ飛び出そうとする。
「待って待って!」
彼女は慌てて女の子を捕まえた。
接近してきた車が急停止。窓ガラスにスモークを施した幅広のドイツ車。
「危ねぇぞバカヤロー!」
タイヤのスリップ音と風体険悪な男性ドライバーの怒鳴り声に衆目が集まる。
「すいませんごめんなさい!」
彼女は即座に頭を下げ、女の子を抱き寄せて歩道に下がった。
「気をつけろ!」
本当は降りてきて殴りつけたい衝動にかられたらしいが、相手が幼すぎて沽券に関わるとでも思ったか、風体険悪なドライバーは再度怒鳴ると、窓ガラスを閉め、荒々しく車をスタートさせ、走り去った。
彼女は小さなため息をつく。ひやり、とし、ハッとした。ヒヤリハットという奴だ。“車に気をつけなさい”と言い聞かせても子どもは飛びだして跳ねられる。こういう場合に起こるのだと納得が行く。
「ごめんねお姉ちゃん」
女の子が言った。
「飛び出したのあたしなのに……」
半べそ。
「いいよ。気にしないで。私はレムリア」
彼女は女の子の頬に手をやり、笑顔で言った。自己紹介した理由、区切りがつくまでそばにいた方がいい気がするから。
「れむ……外人さん?」
女の子の目が円くなった。
「そうだよ。いつもはオランダに住んでるんだよ」
今日は東京多摩だが。
「すご~い。日本語上手なんだね」
「ありがと」
(つづく)
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