【魔法少女レムリア短編集】夏の海、少女(但し魔法使い)と。【2】
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行くとも言う前から準備万端のレムリアに、相原はため息をつき、ずり落ち掛けたメガネを指で押し上げた。
「“強引な娘だ”ってセリフ、佃煮にするほど言った気がする」
言いながら、携帯電話を取り出してボタンを操作。
「是非それで佃煮作ってご飯食べて下さい」
「おもしろくねーしおいしくねーし」
「煮込みが足りないんじゃない?そうだ。夕暮れまでいて夕飯食べて帰ろうよ」
「言うと思った。母親には晩飯不要ととっくにメール済み。その佃煮食わせたるで覚悟しろな。冷蔵庫にウーロン茶あるから出して来なせ」
相原は携帯電話をポケットに収めた。
「わーい。ってあれ?あれって確か2リットル……」
「小さいのちまちま買うより効率がいい」
「持ち歩け?か弱い乙女に持ち歩け?」
「2リットルのペットぶら下げて黄昏の湘南海岸を歩く少女…実にいい夏のワンシーンじゃないか」
「で、そのペットをおもむろにオタクな22歳の後頭部に振り下ろすと」
「凍ってれば武器になるかもな。お前さんの細腕で振り回せれば。しかしオタクな22歳は砂の上のシルエットで直前に気付き、ひらりと回避」
「したつもりが日頃の運動不足がたたって……」
「えーい。もういい。キリが無いわい。クルマ冷やしておくから、ジタバタして出てらっしゃい。多分渋滞で2時間半は掛かるからそのつもりで」
つまり、ジタバタとは、トイレなど済ませておけ。
「はーい」
レムリアは先に部屋を出る。
相原の家から最も近い海は、神奈川県のいわゆる湘南海岸となる。国道16号を南東へ駆け下るが、東名高速道路のインターチェンジを始め、名だたる渋滞箇所がいくつもあり、抜けるまでに相原の予想通り2時間を要した。
「だから日中の16号はヤなんだ」
「悪うござんしたね。ぶー」
(つづく)
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