【魔法少女レムリア短編集】夏の海、少女(但し魔法使い)と。【9】
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「気持ちは判るよ。オレも中学出るまで成長しないんじゃないかとびくびくしてたからね。過ぎてしまえば個人差の一言なんだけど、当事者には目の前の壁。つーてもまぁ、幾ら言ってもアタマとココロは違うわな。だから、下手なことは言わないし、ありきたりなセリフも口にする気は無い。だからただ一つだけ。押さえ込まずにオレに当たっておくれ」
するとレムリアは、何も言わず、砂の上に飛び降りた。サンダルを履いて、波打ち際へ。
水の中に手を入れ、水をすくうようにして。
「そうする!」
唐突に、笑顔で、水を相原へぶっかける。
びしょぬれ。
「あのな」
「当たれって言ったじゃん」
「文句は幾らでも聞くが、って意味だ!」
相原は言いながら、岩の上から水の中へバシャンと飛び降りる。
盛大な水しぶきで今度はレムリアがびしょぬれ。
「ひど……」
「良く言うよ先に」
「えーでもあたしこんなにビショになるほどやってない~」
二人笑顔でにらみ合う。
「やるかぁ?青春ドラマみたいにぶっかけあいするかぁ?」
相原は水の中に手を入れ、レムリアを見、しかしその先実行に移さず、力が抜けたようにふっと笑った。
「その笑顔が、一番いいよ」
「お世辞は一度だけっ」
レムリアはかまわず、相原に水をかけ、そのまま逃げるように走り出した。
麦わら帽子を押さえ、短い髪をなびかせ、光の中を走って行く。
そして夕刻。
約束していた6時半近くに店に戻ると、中は客でぎっしりであり、外の階段にも人の列が続いている。雑誌にでも載っている店なのか。
その居並ぶ列の脇を申し訳なさそうにすり抜ける。自分らを見つめる目線は狡いという意図であろうか。
「お待ちしておりましたどうぞ」
(つづく)
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