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【魔法少女レムリア短編集】夏の海、少女(但し魔法使い)と。【5】

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 レムリアははにかみながら、自分の胸元に手を添えた。……と言っても、正直なところ、彼女が子ども料金で電車に乗っても咎める者は無いと思われる。一般に女の武器と言われるのは、男性心理としてスリーサイズは?と訊きたくなる状態だが、彼女の場合訊いたら逆にいけないのでは?というのが相原の正直な認識。最も、そんな目でこの娘を見たことは過去にない。というか、自分たちがそんなネタで喋ったのは恐らく初めて。
 相原は思わず手を添えた胸元に目をやり、ハッとして目線を外し、海へ向ける。
「……どうかした?」
 そんな相原に、レムリアは逆にからかうように言い、歯を見せた。
「何でもない。食ったらホレ、うろつくぞい」
「うん。わーい憧れの太平洋」
 ウェイトレスに出てくる旨伝え、道を横切って海岸へ降りる。
 レムリアは履いていたサンダルを脱いで素足。
「あつ~」
 焼けた砂に、ぴょんぴょん跳び跳ねるように足踏み。
「これ持って」
 レムリアは手にしたサンダル、そして巻いていたウェストポーチを相原に託した。
 波打ち際へ走り出す。相原は彼女を視界から離すことなく、ゆっくり歩いて後を追う。
 レムリアは嬉しそうだ。踊るように、水しぶき上げながら走る少女。海風に飛ばされないよう、麦わらを抑えて。
 そんなレムリアに相原は携帯電話のカメラを向ける。ピントだけ彼女に合わせて。
「レムリア!」
 呼んで、振り向いたところでシャッター。スナップされた彼女は、微笑んで、その瞳が陽光に煌めいた姿。
「肖像権の侵害!」
 レムリアは相原を指さそうとし、目の前を数人に横切られて慌ててその手を引っ込める。彼らはまるでレムリアなど見えていないかのように、談笑しながら行き過ぎる。
 見回せば行き交う人々はみな水着。そうでなくても軽くサマーウェアを羽織っている程度であり、薄着とはいえ着衣の二人は場違いという印象が否めない。
 目の前を転がるビーチボール。
 それを追って楽しそうに走って行く少女達。背格好や顔の造作からローティーンの……レムリアと同じ程度の少女達と見られる。ビキニ姿であり、そっちだけ見れば逆にそんな年齢とは感じない。要するに育ちが良く大人びているのである。
 
(つづく)

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