【魔法少女レムリア短編集】夏の海、少女(但し魔法使い)と。【13・完結】
相原はクレジットカードを渡しながら言った。まぁ、自ら看護師と名乗った以上、とぼけても仕方あるまい。なお、レムリアが衆目慣れしているのはこうした経緯による。ちなみに彼女の本名はメディア・ボレアリス・アルフェラッツ……中世以降魔女を排出してきたとされる欧州の小国、アルフェラッツ王国の歴とした王女である。ボランティアの医療団体と行動を共にし、世界中を飛び回る。
だから、彼女の傷口が化膿すると、世界中の子ども達が困るのである。
「かわいいですよね~」
「おかげさんでお店も繁盛したようで?」
嫌味なので、相原は目線を外して言いながら、伝票にサイン。
「……バレてましたか」
店長は後頭部をポリポリ。
「いえ、こちらも我が儘言いましたから」
「やっぱり魔法……ですか?」
「え?」
「彼女の国、代々女王は魔女と」
そのセリフに、まず相原は伝票とカードを財布にしまい、次いでニタッと笑うと。
「だとしたら、気を付けた方がいいかもですよ。何せどんなにピンチの命も救う奇跡の娘ですから。逆もまた真なり」
「え?」
意味を判じたかうろたえ始める店長を背に、相原は店を出た。
階段を下りると、自分を呼ぶ高い声。
「どした!」
「あのでっかいペットボトル持ってきて!傷を洗いたい」
すっかり日が暮れたが、輝く瞳はここからでもすぐ判る。
「バイタルは?」
「大丈夫!」
相原はクルマから例の2リットルウーロン茶を取り出すと、砂浜へ向かって走り出す。
近づいてくる救急車のサイレン。
相原は時間を見ようと携帯を開き、その画面に壁紙として貼り付けた昼のスナップを見、小さく笑った。
君は、君が思ってるほど、子供っぽくなくなってきてる。
それが証拠に君が看護師だと手を上げて、その女の人、疑うようなそぶりを見せたかい?
夏の海、少女(但し魔法使い)と。/終
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