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【魔法少女レムリア短編集】夏の海、少女(但し魔法使い)と。【3】

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 レムリアの膨れた頬を相原が指でつついて空気を抜き、保土ヶ谷(ほどがや)バイパスへ入ると、渋滞は解消。相原は軽自動車のアクセルをグッと踏み込み、車速を上げた。信号なし、自動車専用、片側3車線。今はスースー走っているが、これでも渋滞する時はするので、この東京神奈川エリアの人口密度、クルマ密度が異様ということであろう。更にクルマはそのまま、有料道路である“横横”こと横浜横須賀(よこはまよこすか)道路に進行する。終点まで走って三浦半島先端に向かう手もあるが、相原は途中で降り、鎌倉・鶴岡八幡宮(つるがおかはちまんぐう)の脇を抜けて七里ヶ浜(しちりがはま)海岸に達した。
「すご…」
 海沿いのT字路を右折するなり、レムリアは思わず身を乗り出した。気温が降下し始める時間になったはずだが、134号線の車窓左側に連なる海岸は、日なたを探すもままならぬほど、隙間無くびっしり並ぶビーチパラソル。
「適当に止めるよ」
 鎌倉市の市営駐車場もあるにはあるが、こう混んでいては駐車場所の選り好みはできない。海から道を挟んで反対側、丁度1台クルマが出たレストラン駐車場へこれ幸いと止める。白い柱に白い壁、夏の日射しに眩しく輝く、オシャレな外観の(料理の値段の高そうな)レストランだ。
 相原はポケットの上から財布に触れながら小さく舌打ち。
 レムリアが麦わら片手に助手席を降りる。
「お店勝手に止めていいの?」
「良くない。だからまずお茶」
 フロアは建物外付けの鉄板階段を上がって2階。カランコロンとエントランスのベルを鳴らして入る。海岸はぎっしりだが、中もそれなりで、空いたテーブルがどうにか一つ。全席禁煙なのは評価大。
 その空いたテーブルに陣取ると、いかにも夏休みバイト、という風なウェイトレスのそばかす娘がお冷やとおしぼり。そのまま動かないあたり、即刻注文しろいということだろう。手っ取り早くケーキとお茶のセット二つ。レムリアはアイスティー。相原はアイスコーヒー。
「すいませんがね」
 琥珀色を持ってきたウェイトレス娘に相原は相談を持ちかける。夕食もここで食うからそれまで数時間、車を止めさせてくれ。
 
(つづく)

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